グレートリフトバレーに行ってきました

魚の生態について学びを深めていた大学生の頃、アフリカ大陸にあるグレートリフトバレー(大地溝帯)に連なるアフリカ大湖沼の存在を知りました。
大地の裂け目にできた湖では、生物達が独自の進化をとげているというのです。
今回は、そんな湖の中でも大小様々な固有種が存在する、タンガニーカ湖を訪れてみたので記事を書かせていただきます。
タンガニーカ湖は“2位”がいっぱい
アフリカで2番目に大きい(世界5位)

タンガニーカ湖はアフリカ東部に位置し、南北670km、東西50km、面積32,900㎢という巨大な湖です。(琵琶湖は670㎢)
湖岸線長は1,900kmにも及び、北部ブルンジ、東部タンザニア、西部コンゴ民主共和国、南部ザンビアといった形で4ヵ国が接しています。
ちなみに、写真の船はザンビアからタンザニアに向かうのだとか。過積載すぎてビックリですよね。
世界で2番目に深い

大地の裂け目にできた湖なだけあり、タンガニーカ湖の最大水深はなんと1,470m、平均水深は570mという規格外の深さを誇ります。
日本一深い田沢湖の最大水深が423mですから、タンガニーカ湖がいかに深いか分かりますよね。
また、大地溝帯(プレート境界)の直上ということもあって、平野部が少ないのも特徴。言わずもがなしばしば大きな地震も起こるようです。
世界で2番目に古い

大きさや深さよりも衝撃的なのは、タンガニーカ湖の歴史です。
世界で3番目に古い琵琶湖が形成されたのは400万年前(通常、湖の寿命は数千年~数万年)とされているのに対し、タンガニーカ湖は2,000万年前から存在し続けているとされています。
これは日本列島がユーラシア大陸から分離したのと同じくらいというから驚愕します。
古代湖は固有種の宝庫
8割以上がタンガニーカ湖の固有種

2,000万年という途方もない時間と周囲の水系から隔離された特別な環境により、タンガニーカ湖では魚達が独自の進化をとげました。
そのため、生息する300を超える魚種の内、タンガニーカ湖にのみ生息する固有種は8割を超えるとされており、“生物多様性の宝庫”として近年注目を集めています。
僕にとってボーナスステージでしかない

魚釣りという面では、マイナー極まりないフィールドですが……
初めて釣る1ピキを求める僕にとって、まさにタンガニーカ湖は楽園だろうなって。いつか、行ってみたいなって。
そんな憧れを長らく抱いていました。
飛行機4便、バス移動1,000km、船に揺られること8時間、目的地に着いたのは実に日本出発から5日後のことでした。
早速、釣り開始!

透明度10mはあろう透き通ったタンガニーカ湖を覗き込むと、沢山の魚達が泳いでいます!
確率論的に、この内8割は固有種! ワクワクしながら釣り開始です!
サビキ釣りで次々掛かる多種多様な魚達
着底と同時にすぐ釣れる

湖底でソワソワと泳ぐ魚達にむけて、試しに日本から持ってきたサビキ仕掛を落とし込んでみると、驚くほど簡単に魚が掛かってきます。
とくに、オーナーのアミエビ実寸というサビキ仕掛が効果的でしたね。(誰の得にもならない情報ですが……)
何も難しいことはなく、コマセをせずとも、餌をつけずとも、魚が掛かってきます。
湖岸沿いは、ひたすらにお魚天国

街で魚釣りをしようとすると大勢の人が集まってきます。アジア人って珍しいんでしょうね。
大人達は15分もすれば僕に飽きていなくなりますが、子供達はずっと一緒です。彼らの口癖は「お金ちょうだい」だけど……。
中には釣り糸と釣り針を持っている子もいて、旅終盤では彼らと一緒に魚釣りを楽しむのが毎日の日課になっていました。
あっという間に10種類

僕の勉強不足のせいですが、釣れる魚の殆どが名前も知らなければ、見たことすらないものばかり!
わずか1時間あまりの実釣で10種以上釣れることも。
「次はどんな魚が上がってくるんだろう」ってワクワク感がずっと続くので、今こうして文章を書きながらも、すぐにタンガニーカ湖に戻りたくて仕方ありません。
沢山釣れた魚の中でも、とくに僕が気に入った3種をご紹介しますね!
Ophthalmotilapia ventralis かな?

一際鮮やかな発色で目立つ存在だったのは、オフタルモティラピア・ベントラリスと呼ばれるカワスズメの仲間です。(自身のYouTubeチャンネルへのコメントで教えていただきました)
全身真っ青な個体も釣れたりして印象深かったですね。
エッグダミーと呼ばれる腹びれ先端の黄色い突起がとてもチャーミングでした。
Altolamprologus compressiceps かな?

いかにも肉食系! というフォルムが気に入ったこの魚。
調べた結果、アルトランプロローグス・コンプレシケプスかなと思います。
婚姻色に染まるとオレンジ色に変化するのだとか。再訪できるなら婚姻色を釣ってみたいですね!
Lamprichthys tanganicanus かな?

これまた視聴者さんに教えていただいたのですが、タンガニーカ湖のメダカ類(カダヤシの仲間)ランプリクティス・タンガニカヌスという魚も釣れました。
湖畔だけでなく沖合にも群れで現れ、終始フィッシュイーター達に追いかけられっぱなしでした。
体表の青いスポットがとっても美しかったですよ。(ハイパーパニックサビキ最強!)
水深40m前後で実釣すると……
憧れのフロントーサ

船に乗って沖合まで出ると、水深20m前後を境にして湖底の環境が岩から砂泥(恐らく)に変化しました。
すると釣れる魚種にも変化が見られ、水深30~50mのエリアでタンガニーカ湖を象徴する魚のひとつ、フロントーサというシクリッドをキャッチ!
フロントーサにも様々な種類や地域差があるようなので……詳しいことはこれから勉強します。
まるでムロアジ

こちらバシバテスの一種。遊泳力が高い類の魚で、サビキだけでなくメタルジグや身餌でも釣れました。
鮮やかな色彩や模様だけでなく、食べても大変美味だったのが印象的。

姿もさることながら、食味もアジの塩焼きそのもの。
ちなみに、泳がせ釣りの餌としてもムロアジ並に超優秀でした。
本当に沢山釣れました

じつは、この記事を書いているのは帰国の1週間後で、まだ自分自身が今回の渡航で何種類の魚と出会えたのかを把握しきれていないんです。
ひとつひとつ写真や動画を見返しながら、図鑑やインターネットから得られる情報と照らし合わせていく作業が今から楽しみで仕方ありません。
100%再訪します

今回は世界有数の古代湖であるタンガニーカ湖とそこに生息する固有種達をご紹介しました。
子供達に案内してもらって釣れたこのナイルティラピアっぽい魚(オレオクロミス・タンガニカエ)を含め、今回ご紹介した魚種はすべてタンガニーカ湖の固有種と思うと凄いですよね。
当たり前かもしれませんが、釣り切れなかった魚が沢山あるので、「必ず再訪するぞ」って強く思える湖でした。
ここまで強く思えたのは南米のアマゾン以来かもしれません。次、いつ行けるか分かりませんが、その時が今からとても楽しみです。
撮影:山根央之