ロッドの進化も多様性の時代

時代と共に技術は進化しますが、釣具においてもそれは同じ。
例えば、構成部品の少ないロッドは進化を感じづらい部分があるかもしれませんが、カーボン素材自体や積層技術が進化したのは間違いありません。
しかし、今回筆者が注目したいのは“ガイド”。
個人的には、ガイドの進化こそがロッドの進化において非常に貢献度が高いと感じているのです。
“小径多点”ガイドについて語りたい

ガイドに着目した場合、皆さんの頭にはどんな進化が思い浮かぶでしょうか?
筆者が一番衝撃を受けたのが、2000年代後半頃から見られるようになった小径多点ガイド。
小型化された極小ガイドがたくさん付いているロッドのことです。

筆者が愛用しているゼナックのプレジールアンサーというロッドには、8ft9inで16点ものガイドが付いています。
所有している他のロッドを見てみると、8ftで8点、10ft5inで9点というガイド数。
ゼナックのガイドがいかに多いかが、分かっていただけるかと思います。

次に、ガイドの大きさを比べてみましょう。
ガイドが小径化されたロッドは、元ガイド(一番リール側のガイド)でも一般的なトップガイドと同程度のサイズが取り付けられています。

ちなみに筆者が所有しているロッドは、元ガイドからトップガイドまでが全て同サイズ。
では、この“小径多点”ガイドが一体何をもたらすのか、実際に愛用している筆者の実体験とともに解説していきたいと思います。
おかもち
ちなみに、現在このガイドシステムを積極的に採用し、有効性を提唱しているのはゼナックのRGガイドとツララのストローガイドのみです。
小径多点ガイドのメリット
ロッドの軽量化

まずは、ロッドの軽量化につながるということでしょう。
小径ガイドは1個当たりの重量が0.15〜0.20gなので、16個付いても3g程度。一般的なロッドは元ガイドだけで2g、トータルで4〜5g程度になるのが一般的です。
ガイド数が増えることで総重量が増すイメージを持つかもしれませんが、それよりも小型化することでロッドの総重量はグッと抑えられるのです。
スペック上の軽量化に貢献することはもちろん、ロッドの先重り感も軽減されるため、実釣時の操作性も向上します。
おかもち
「ガイドの重量が変わるだけでロッドバランスってこんな変わる!?」ということを体感できると思います。
ブランクスのポテンシャルを最大化

ブランクスが非常に優れた性能を持っていたとしても、その性能を活かすも殺すもじつはガイドセッティング次第です。
ガイド数が少ないと、ロッドを曲げるための支点が少なくなることから、ロッドが本来持つ性能を活かしきれなくなります。

一方で、ガイド数が多くなれば、ロッドを曲げるための支点が多くなり、ブランクスが持つ本来のカーブ通りに曲げることができるようになります。
それによりエネルギーロスを最小限に抑え、ロッドパワーを最大化できるというわけです。
また、支点が多くなることでロッド・ガイドに対する応力集中が緩和されて負荷を分散することができるため、ロッド破損のリスクはもちろん、ガイドスレッドのクラック発生も低減することができます。
実釣での使用感は?
ライントラブルはかなり減少

小径多点ガイドは、リールから放出されたラインが元ガイドを通った瞬間にラインのバタつきを収束するため、ガイドへの糸絡みがしづらくなります。
加えて、支点が増えガイド間の距離が短くなることでよりラインのバタつきを抑制し、ライントラブルを劇的に低減させることができるのです。
仮に糸絡みしたとしても、軽くロッドを揺すって治ることがほとんどで、個人的には非常にストレスフリーで釣りに集中できるようになった印象です。
抜群のキャストフィール
筆者が小径多点ガイドのロッドで初めてキャストした時、ラインが切れたかと思って一気に冷めてしまったことをよく覚えています。
実際にはラインは切れてはおらず、ラインの放出抵抗が小さすぎてラインが出ている感覚が無かったというワケなんです。
キャストフィールが非常に滑らかな要因は、元ガイドでラインのバタつきを抑制することによる各ガイドへの接触抵抗の低減と、ラインがロッドに接触しなくなるため。
飛距離については正確に計測したことはありませんが、「飛距離が落ちることはない」程度で、一般的なロッドと同程度と感じています。
ただし、小径多点ガイドは強風条件等の悪条件下でのキャスト性能がアップするため、どんな条件でも安定して飛距離を出せるというイメージです。
おかもち
本当にラインが切れたと勘違いするような無重力状態を感じることができます。
初めて振ったのは10年ほど前ですが、あの時の衝撃は未だ鮮明に覚えていますね……。
ブランクスのパワーを最大限活用できる

メリットのところでブランクスのポテンシャルの最大化について触れましたが、筆者自身がその恩恵をものすごく感じている一人。
以前、秋口の河口エリアでシーバスを狙っていた際にブリがヒット。周囲に他のアングラーがいて無駄走りはさせられない状況だったので、PEラインは1号でしたがあえてドラグを締めた状態でファイトしましたが、結果的にロッドはしっかり曲がり込んでくれ、ラインを切ることもなくブリを寄せることができました。
他にも、パワーファイターで知られているアカメを橋脚際でヒットさせた時も同様に、しっかり魚を止めることができました。
振り返ると、ロッドパワーのポテンシャルを最大限に活用できたからこその釣果だと感じています。
小径多点ガイドは、魚が大きいほど真価を発揮するといっても過言ではありません。
デメリットもあるけど、それ以上にメリットが大きい

ガイドは意外と高額です。小径多点ロッドの普及が進まない大きな要因の一つで、多点になればその分ロッド自体の価格も上がります。
それ故、市場にはあまり出ておらず、選択肢が少ないのが現状です。
また、ガイド数が多くなれば、ラインを通す際の手間は増えます。さらに、ガイド径が小さくなるので、視力が悪い方には死活問題かもしれません。
ただし、そのデメリットを帳消しにする以上のメリットが、“小径多点”ガイドにはあると感じています。
キャスト時の糸絡みトラブルを軽減させたい方や、圧倒的なキャストフィールを感じたい方、ワンランク上のロッドパワーが欲しい方には、ぜひ試してみていただきたいです!