バリバスから“9本編み”が出たらしいけど……

2024年にバリバスから、9本編みのPEライン「アバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X9 」(以下、X9)が発売されたのをご存知でしょうか?
言わずもがな、PEラインの定番といえば4本編みと8本編み。
正直に言うと、PEは4本編みと8本編みで事足りていて、9本編みと言われても「1本増えたか〜」ぐらいの感覚でした。
でも、何やらこの9本編みがなかなか個性的でおもしろい糸だそうで……。
なおと
「9本編みのPEなんかいる?」って思っている方も多いでしょう。
何を隠そう筆者もその1人です(笑)
10×10 X9はどんなPEラインなのか?
バリバス アバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X9
その名の通り、このラインはジギングやタイラバといったオフショア用として発売されています。
コンセプトは、「圧倒的なフォールスピード」と「ターゲットレンジを的確に射抜く直進性」。
まずは、具体的にどんな作りになっているのか紹介します。
9本編み

芯となる原糸が1本通っており、その周りを8本の原糸で編み込む構造になっています。
この芯となる原糸は、周囲と同じPE素材なので比重は8本編みと同等だそうです。
芯があることで断面が丸くなり、そのうえ張力や圧力によって糸が潰れにくいことも特徴。
ちなみに、糸が潰れにくいがゆえに、糸を巻いた時に8本編みよりも“かさ”が増えることがあるようです。
また、芯があることで糸質は8本編みよりも硬くなっています。
縦編み

もう一つの大きな特徴が、縦編みと呼ばれる製法です。
一般的なPEラインは画像左のように密な編み方をされているのですが、X9は鋭角に編み込まれています。
PEラインは張力が働いた際に、編み込みがたわんで伸びる、構造由来の伸びが生じます。
しかし、縦編みはもともと原糸が鋭角に編まれているので変形しろが少なく、伸度は3%台まで抑え込まれているそうです。(一般的なPEの伸度は4〜5%)
新しいコーティング

ラインの表面には、SP-TⅡという新しいコーティングが施されています。
樹脂膜で表面を覆うことで、吸水や摩耗による劣化を軽減するだけではなく、撥水性を高めて水切れも向上しているようです。
マーキング

一般的なPEラインは5色×10mのものが多いですが、「10×10」の名の通り、10色×10mのカラーリングを採用しています。
また、従来品の「アバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X8」からカラーリングのパターンが見直され、より視認しやすくなっているとのこと。

カラー表示シールも付属しているので、ベイトリールならボディに貼り付けられます。
なおと
実際に使ってどうなのか!?
しっかり検証してまいりました!
日本屈指の激流海域で検証!

検証の場として選んだのは、国内屈指の急潮流を誇る、激ムズフィールド「明石」。
どれぐらい潮が速いかというと……
これぐらい(笑)
ちなみに、これは無風時なので風波ではありませんよ(驚)
しかも底の荒いところが多く、“ジグの墓場”と呼ばれるポイントがあるほど。
なおと
つまり、X9の感度や水切れを試すには、もってこいなフィールドだということです!

5月上旬、遊漁船「ライズ」にお世話になり、編集長しみけんとタイラバ&ジギングをメインに実釣していきます!
船長に近況を聞いたところ、「どの釣りもめちゃ厳しいから覚悟して(笑)」とのこと。
どうやら、暖冬で冬の水温が高かったものの、3月にまったく水温が上がらなかったのであらゆる魚が遅れているようです。

まずやってきたのは、明石海峡東側にある水深20mほどのシャローエリア。
時折産卵絡みっぽい少し浮いたタイも映りますが、基本的に反応は底付近です。

なるべく横方向に広く探りたいので、0.6号を巻いたスピニングタックルで30gのヘッドをキャスティング。
ラインカラーで4色(40m)ほどキャストし、着底後40巻きしてから再度底取りし、巻き上げるのを繰り返します。
なおと
軽いヘッドでキャストして糸をたくさん出しても、着底が明確ですね〜。

すると、着底から数巻きのタイミングでコツコツという小さなアタリが。
落ち着いて、反転したのを確認してからフッキング!
小気味良い引きとともに現れたのは……

本命のマダイちゃん!
30cmちょっとの可愛らしいサイズではありますが、朝イチから好調な滑り出しじゃないですか。
なおと
10色あるのでキャストしてもラインの放出量を把握しやすく、仕掛けの角度や巻いているレンジをイメージしやすいゾ!

小移動して30m前後のポイントにやってきました。
潮は1kt(ノット)ぐらいで流れているはずなのですが、船が2kt以上のスピードで流されます。
これが二枚潮という状態で、上潮がぶっ飛んでいるわけですね。
なおと
こうなるとラインがどんどん上潮に引っ張られて流されるので、底取りが難しくなるんです。

船長も「底取れんやろ?ちょっと移動しよか」と言うほどの状態でしたが……
意外と30gのヘッドでも底取りができています!(もちろんキャストせず、足元に落としています)
すると、中層で何かがゴツンッとヒット!

大サバでした。
連発させられるかと思いましたが、どうやら単体君だったようで後は続かず。

なんとここで、しみけんにヒット! 竿が大きく叩いています!
タックルは、硬い先調子の竿に0.6号の“根がかり絶対させない仕様”だそうです(笑)

さっきより少し大きめのマダイでした!
ベイトタックルですが、糸が斜めになっているのを利用し、底付近をゆっくり横方向に巻いて喰わせたとのこと。
なおと
不調と言っていたけど、けっこー釣れちゃうんじゃ!?

と思ったものの、西からの強風でポイントが限られたりで、初日の釣果は以上。
難しいぜ。明石……。

2日目の朝、「シーバスやったら入れ食いやで」と言ってきた船長。
なおと
オフショア用PEとはいえ、キャスティングでの使いやすさも検証せねば!
という理由をこじつけ、1.2号を巻いたキャスティングタックルでシーバスを狙ってみることに。

カタクチイワシの群れに70cm前後の良型シーバスが着いていて、釣れる!

釣れる!
しばしの入れ食いを堪能した後、明石沖へ。

明石海峡の東側にある60mラインでタイを狙います。
ボトムに感度がポロポロあり、潮も1.5kt程度で流れており、釣れる条件は整っているのですが……
釣れません。

しみけんに待望のヒットがありましたが、良型のアジちゃんでした。
深場でしたが、「アジングみたいに前アタリから伝わってきた!」とのこと。
しかし、結局タイは釣れず。

上潮が走り始めたタイミングで、青物を狙うことに。
潮流が2ktを超えてくるとタイは釣りにくくなりますが、青物の活性は上がってきます!

明石海峡西側のやや底が荒いポイントを狙います。
ハイシーズンなら反応モリモリですが、まだ群れが少なくて小さいので、中層に一瞬パラパラっと映る程度。
魚との遭遇率を上げるために、80gのブレードジグをキャスティングします!

これが正解でした!
ジャカジャカとシャクってから、フリーフォールさせるとラインがビタ止まり。
なおと
海中のラインがフケにくいので、手元のラインでアタリを取れます!

間髪入れずにしみけんもヒット!
1.5号を巻いたフルソリッドロッドが綺麗に曲がっています!

さらに間髪入れずに、筆者の魚が船際でフックアウト!
なおと
なんでや(涙)

しみけんはハマチをキャッチ!
シャカジャカっと巻いてから大きくジグを飛ばし、スライドからフォールに移行する直前ぐらいを下から食い上げてきたそう。
なおと
ベイトタックルだとさらに感度が際立ち、ジグの挙動が明確にわかるようです!

連発させたいところでしたが、潮が緩くなって青物の時合いは終了。
その後はタイラバをやってみましたが、ノーバイト。
なかなか悔しい釣果で納竿となってしまいました。
なおと
春の明石は本当に難しい……。

大きな魚が出なかったのが心残りで、個人的にリベンジ釣行をしてきました!
日本海丹後のジギングでは、2号を使って10kgクラスのブリを3本キャッチ。

明石では0.6号で4kgオーバーの大鯛を釣ることができました!
なおと
なんでロケの時に釣れんのや(笑)
10×10 X9をインプレ

かなり長時間、みっちりと「アバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X9」を使い込んだので、その使用感を総括してお伝えします!
フォールスピードが速い

一番わかりやすい特徴が、水切れが良くてフォールが速いこと。
明石でのタイラバでは、状況が渋かったのでギリギリまで軽いヘッドを使っていましたが、少々潮が速くなったり、船が流されたりしても底取りできるのは驚きでした!
ラインが潮を切って真っ直ぐな状態をキープしようとするので、潮の影響が最小限になっているからでしょう。
着底からの巻き上げで、すぐにルアーが動き始めることからも、直進性の高さが伺えましたね。
なおと
糸が流れを受けた時の「ツー」という感覚も少なく、糸が細くなったように錯覚します!
複雑な潮に強い

ラインが直線状態に近くなるということは、急潮流域、二枚潮や三枚潮、ディープのドテラ流しといった、難しい釣りが「簡単になる」ということ!
ラインが海中でフケると、着底がわかりにくい、底切りが遅い、ルアーの動き出しが遅いなど、基本的にデメリットしかありません。
底切りが遅れてルアーが底で留まる時間が長くなると、フォールでチェイスしていた魚に見切られたり、ルアーが底を転がって根がかりしやすくなったります。
もちろん技術で補う必要もありますが、X9を使えばこういったネガティブな要素をかなり減らせます。
また、ルアーへの入力をダイレクトに行えるので、ルアーがよく動くことも魅力ですね。
なおと
とくに地元の丹後は深くて二枚潮がきついので、着底後は糸フケを全力で回収するのですが、それがすごく少なくなりましたよ!
感度は抜群

低伸度のラインが直線状態になっているわけですから、そりゃもう感度は抜群!
軽いヘッドのタイラバでも着底がボケることがなく、手元にまで着底感が響いてくるので、目感度と手感度の両方を使って底取りができます。
ジギングの際には、横を向いてスライドしているジグにラインテンションを掛けると、ジグが縦になる様子までしっかりと伝わってきました!
オフショアフィッシングにおける感度は、底やアタリがわかるだけがメリットではなく、感度によってルアーを操れることも大きなメリットです。
なおと
情報量が多いと海中をイメージしやすい=釣果に繋がります!
ノイズが少ない

9本編み構造と最新のコーティングによって、ラインの表面はめちゃくちゃ滑らかです。
これが水切れの良さに繋がっているのですが、メリットはそれだけじゃありません。
ガイドとの抵抗がとても小さいのか、巻いている時やジャーク時のヌルヌル感が凄く、ノイズがほぼゼロ。
ノイズ(余計な情報)が少ないことでさらに感度が活きてくるので、とくにタイラバには最高でした!
なおと
今まで低伸度系PEはガイド鳴りが大きいものが多かったので、これは大きな違いですね!
直線強度が強い=ワンランク細くできる
号数 | X8のMAX LB. | X9のMAX LB. |
---|---|---|
0.6 | 14.5 | 14 |
0.8 | 16.7 | 18 |
1 | 20.2 | 23 |
1.2 | 24.1 | 25 |
1.5 | 28.6 | 33 |
2 | 33 | 39 |
3 | 48 | 57 |
じつは、太くなるほどX9はX8よりも直線強度が強くなります。(0.6号はX8が強い)
X8の2号、X9の1.5号が33LB.なので、「今までよりもワンランク細くする」という選択が可能です。
糸は細くなるほど水の抵抗が少なくなるので、よりフォールスピードが速く、高感度になるってことですね!

地元の丹後は2.5号がスタンダードなのですが、X9なら2号でまったく問題なし。
十分強いし、感度も操作性も高まるので、もう良いことずくめ(笑)
また、X8の1.5号だと8号リーダーを結ぶと根がかりした時に高切れのリスクが高まりますが、X9の1.5号ならリーダーとルアーの結束部から飛ばせます。(ノットがしっかり組めている前提で)
つまり、従来よりも太いリーダーを使いやすいってことですね。
なおと
明石みたいな、底が荒い場所で細PEを使うフィールドではかなり魅力的!
10×10は“タナ迷子”にならない
従来品の10×10 X8を使ったことがなかったこともあって、正直、使うまでは「5色で十分やろ」って思っていました(笑)
しかし、使い慣れた今となっては「めっちゃ便利」です!
思い返すと、フォール中にナブラ探してよそ見したり、友人と話していたりして、「あれ? 70m? 120m?」ってことがわりとあったんですよね。
これが10×10だと、さすがに「120m? 220m?」とはならず、タナ迷子なることはありません。
とくにディープタイラバや中深海、トンジギといったラインをたくさん出す釣りとは好相性だと思いますよ。
なおと
5色に慣れていると違和感があるかもしれませんが、1日も使えば慣れますよ!
耐久性は十分

プライベートも含め、かなりの釣行回数をこなしましたが、現時点ではラインブレイクや変なトラブルはゼロです。
ご覧の通り、極端な色褪せもありません。
10色になると近い色が増えますが、釣行を繰り返しても判別が効くのは◯。
なおと
そもそもの発色も良いので、かなり見やすいですよ!
キャスティングとの相性は……

物事の良し悪しは表裏一体。もちろんX9も長所だけではありません。
X9の短所は、縦編みゆえに“耐摩耗性はX8に劣る”ことです。

上の画像は、ロングリーダー(スピニング)で丸1日キャスティングした後の、リーダー結束部の上部です。
キャスト直後に一番強く元ガイドに当たる部分に、局所的なササクレが起こっていました。
バーチカルで使っていたタックルには一切見られなかったので、ダメージの原因は摩擦で間違いないと思います。
ちなみに、結束部をガイド内に巻き込んだショートリーダーでは、ラインに目立ったダメージはありませんでした。
なおと
個人的には、バーチカルに落とす釣りにはX9、キャスティングする釣りにはX8と、使い分けたいですね。
ロッドやルアーと同じく、ラインも適性を考えて使いわけましょう!
ベイトキャスティングとの相性が良かった

じつはベイトタックルのキャスティングでも使ってみたのですが、コシが強くて滑らかなので凄く使いやすかったです!
1ヶ月ほど使い込んでいますが、ラインブレイクやトラブルもありません。
ベイトタックルでのメインラインになりそうです! というかなりました(笑)
なおと
ベイトタックル愛好家の人はぜひ試してみてください。
釣り人を助けてくれるラインです!

感度やフォールスピードといったいろいろな良さがあるわけですが……
オフショアの釣りが楽に、簡単になる。
これが10×10 X9の凄さだと思います。
難しい状況ほど楽に、簡単になるので、ぜひ一度は試してほしいですね。
撮影:ちゃったTV なおと / TSURI HACK編集部
sponsored by 株式会社バリバス
▼今回使ったアイテム
バリバス アバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X9 0.6号 300m
バリバス アバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X9 1.2号 300m
バリバス アバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X9 1.5号 300m
バリバス アバニ ジギング10×10 マックスパワーPE X9 2号 300m