魚に針を飲まれてしまったら
針の位置を確認しよう

まずは、魚のどこに針掛かりしているかを確認しましょう。
この時、歯が鋭い魚やヒレなどに毒針を持つ魚もいますので、魚種が分からない場合は無暗に魚体に触れないようにしてください。
針が咽頭歯より前方に見える場合

エラや咽頭歯より前方の口腔内に針掛かりしている場合は、魚体へのダメージが少なくすむ場合が多いです。
ブラックバスやハタなど、指が入るくらい口の大きな魚なら素手でも外せますが、先細のプライヤーやフォーセップ、針外しなどがあると便利。
また、細かな歯でも思わぬ切り傷を負うことがあるので、魚の口に指や手を入れる時は注意が必要です。
針が見えない場合

咽頭歯よりも奥に針が入り込んでしまったり、針先がどっちを向いているか判断できないほど飲みこまれたりすることも。
この場合は、リリースとキープによって対処が異るので、次項で詳しく解説します。
キープ派
ハリスを引っ張る

魚を持ち帰る(食べる)ことを前提としている場合、効率良く針を外したくなるものです。
キスやハゼといった比較的小さくて口の中が柔らかい魚は、強くハリスを引っ張ることで口元まで針を出せることがあります。
簡単で素早い外し方ですが、魚に対するダメージが大きいため、魚を持ち帰る場合のみにしましょう。
ペンチや針外しを使う

ハリスを引っ張っても針が動かない場合は、ペンチや針外しで外すことになります。
魚や針が小さい場合は、細かい作業をしやすいフォーセップもオススメです。
針のフトコロ部分を掴み、一旦押し込んでから引くようにして外しましょう。
ハリスの傷を要チェック

魚に針を飲みこまれるとハリスが傷つくことも多いので、外した後に指でハリスを触ってザラついていないか確認しましょう。
また、ハリスを切って魚を持ち帰る場合は、少し長めに切り、“針が残っている魚”だと分かるようにしておくことで調理時の怪我を防げます。
リリース派
針を飲みこんでいても魚は死にません

リリースが前提の場合、無理に外そうとするのはNG。
魚は胃袋に針が残った状態でも生きられ、時間と共に針は錆び、抜けたり折れたりして排出されることが多いのです。
科学的にも実証されています

ここで、イワナを用いた“糸切りリリースの生残率”に関する実験例があるのでご紹介させてください。※
週1回のペースで行われた釣獲調査において、針を飲みこんで釣られた77個体に対し、個体識別標識を装着して糸切りリリースが行割れました。
その後、釣獲調査期間中に針を飲みこんだ53個体が再び釣り上げられ、11週目に電気ショッカーによって72個体が再捕獲されています。
また、魚体に残された釣り針は、平均で22日後に針の腐食が始まり、53日後に脱落すると推定されています。
※参考文献:河川性サケ科魚類におけるキャッチアンドリリースの資源維持効果に関する研究 , 坪井 潤一
素早くハリスを切って逃がしましょう

魚種によって生残率に差があるかもしれませんが、針を深く飲みこんだ場合の対処として、できるだけ短くハリスを切って迅速にリリースするのが的確と言えるでしょう。
また、アイゴやハオコゼ、アカエイといった毒魚の扱いに不慣れな方は、怖がって針を外すのに手こずり死なせてしまうよりも、糸切って素早くリリースした方が釣り人も魚もリスクが少ないと言えます。
魚が出血していた時の対処
エラから出血した場合の生残率は低い

エラ付近に針が刺さって勢い良く出血している場合は、残念ながら死んでしまう可能性が高いです。
死んでしまうことを覚悟の上で、水中で姿勢を支えながら保持してあげましょう。
数秒程度で出血が収まれば助かるかもしれませんので、体色や魚体の動きを見ながらリリースできるか判断しましょう。
死んでしまったら……食べる or 剥製

針を飲みこんでしまったことで釣り上げた時点で瀕死、もしくは死んでしまうことも残念ながらあります。
そんな時は、持ち帰って食べたり、剥製にしたりするなど、弔う方法を考えてみましょう。
魚専用の止血剤を利用する
あまり一般的では無いかもしれませんが、どうしても魚を死なせられない場合もあります。
例えばバス釣りのトーナメントでは、デッドフィッシュはペナルティの対象です。
そんなシーンでは専用の止血剤が使われることもあります。
針を飲みこまれないようにするための一工夫
前アタリに気付けるようする

釣り針を飲みこまれてしまう原因はいくつもありますが、多くの場合はアワセ遅れによるものです。
餌釣りやソフトベイトを使った釣りでは、魚が餌やワームに触れた瞬間に何かしらの前アタリが出ているはずです。
魚が餌を食って走り出す本アタリよりも先に出る違和感を掴めるように集中しましょう。
サークルフックを使う

しっかり餌を咥え込ませてからアワせる必要がある釣りもあります。
そんな釣りでは、サークルフックやネムリ針と呼ばれる形状の針が効果的です。
針先が内側に向いているため、飲みこまれてもカンヌキ(口元)まで針先が掛からないように作られています。
大きな針を使う

単純に大きな針に交換するのも効果的な策と言えるでしょう。
ただし、狙っている魚に対して針が大きすぎると釣果が落ちる場合もありますので、ケースバイケースで対応しましょう。
目的に応じて臨機応変に対応しよう

どんなに気を付けていても、針の飲みこみは魚釣りにおいてつきものです。
「ハリスを短く切ってリリースすることで生残率が上がる」という科学的知見がありますので、リリース派の方や食べられない外道に針を飲まれた方は、ぜひ糸切りリリースを実践してみてください。
撮影:山根 央之