釣り場に潜む落水の危険
落水は水辺で行う釣りにとって必ずつきまとう危険です。一括りに落水と言ってもボートや船からの落水だけでなく、陸から釣りでも様々な落水の危険が潜んでいます。ここでは、どんな場所に落水の危険があるのかを、いくつかの例としてご紹介します。危険を知って予防・対策に努めましょう。
テトラポッドからの落水
テトラの上は危険
テトラ(消波ブロック)の上は非常に滑りやすく、いつでも転倒や落水と隣り合わせの場所です。高さのあるテトラの隙間に落ちると自力で這い上がるのも、引き上げるのも困難です。またテトラは「波を消す」役割りの構造物ですので、「人が乗る事を前提として作られていません」。その為、テトラは崩れたり、壊れたりする危険があるという事を知りましょう。
堤防からの落水
堤防では階段・這い上がれるポイントの確認を
堤防は海面まで数メートル以上離れています。それが例え1メートル程度の堤防でも落水した場所から自力で這い上がる事はまず不可能です。釣りをする際はライフジャケットの着用は勿論の事、釣りを始める前に、這い上がれる階段の位置を必ず確認しましょう。
磯での落水・波にさらわれる
磯では最大限の注意を
注意する事はどんな釣り場にも言えますが、磯では最大限の注意をしましょう。磯は常に転倒・怪我・落水(波にさらわれる)といった危険と隣り合わせの場所です。足場が悪い磯は転倒すれば、足を挫くだけでなく、鋭利な岩肌で体を切ったりする危険があります。また突然の高波に襲われる事もあります。
ライフジャケット必須(※膨張式はNG)
膨張式のライフジャケットは、例え膨張したとしても岩で擦れて割れてしまう場合があります。磯でのライフジャケットは必ず浮力材内蔵式のベストタイプを選び、股ベルトをしっかりつけましょう。股ベルトをしていないと、ライフジャケット自体がズレれ首を圧迫したり、脱げてしまう事もあります。
スパイクシューズは必須・肌の露出を抑える
滑りやすい磯場でスパイクシューズは必須です。また岩で肌を切らないよう肌の露出を抑えた服装を心がけましょう。
波・足場を観察
まず現場についたら少なくとも10分程度は波の周期を観察し、大きい波がこないかを確認しましょう。磯には一定の周期で高波が押し寄せる事があります。また足場が濡れている所はそこまで波が来たという証拠であり、足場の濡れている所に立ってはいけません。
無理をしない
雨風が強い時・台風が迫ってきている時などは磯場に近づくのは自殺行為です。折角釣りに来たのにという気持ちも分かりますが、命と魚どちらが大切かを考えましょう。
滑って落水(斜め護岸・岩)
川・湖・野池などで良く見かける斜め護岸も滑りやすい場所です。雨で濡れたり、水に浸かっているいる部分は特に滑りやすく、コケで覆われている面に一度足をとられると一気に水の中に吸い込まれます。そして、水中の護岸はその殆どがコケで覆われている為、自力で這い上がるのは困難を要します。
濡れた岩や土の上も大変滑りやすい場所です。雨天時だけでなく、雨上がり、朝露でも滑る事がありますので注意が必要です。淡水や止水域の岸釣りでもライフジャケットは欠かせません。
川の流れに足をとられる
川は緩やかに見えても、実は流れ(力)が強く、釣り人の足などいとも簡単にすくってしまいます。流れの強さにもよりますが、川に立ち入って釣りをする際はライフジャケットの着用は勿論の事、膝上より深い場所へ入る事は極力避けましょう。また川は今立っている場所で雨が降っていなくても、上流で雨が降っていると急に水かさが増えます。ゲリラ豪雨や、急な増水で中州に取り残されたり、鉄砲水にあったりと多くの危険が潜んでいる事を自覚しましょう。
ウェーデング時の転倒
ウェーダーでの転倒は死につながる
ウェーダー(胴長靴)を穿いての入水は常に転倒のリスクがつきまといます。水の中は地形がわかないので、石につまずいたり、急深になっている所に落ちる危険もあります。ウェーディングでの移動は基本すり足で、いつでも急深な地形(落とし穴)があるという認識でいましょう。
ライフジャケットは必須
ウェーダーで転倒すると、ウェーダーの中に水が侵入し身動きが取れなくなってしまいます。水の侵入を防ぐには、ウェーディングベルトをしっかりと締めておく必要があるのですが、水が浸入しない事でウェーダーが浮輪のようになり、下半身だけを持ち上げます。下半身が持ち上がるという事は上半身が水に浸かり続けるという事なので、そんな時にライフジャケットがなければ確実に溺れてしまいます。
もし転倒したら
ウェーダーの浮力で下半身(足)が浮いたら、膝を折り曲げて抱えこみ三角座りの体制になると浮く事が出来ます。ですが、パニックの中ではこれも難しい動作なので、ライフジャケットの着用は必須です。
サーフではウェーディングしない
サーフで用いるウェーダーはウェーディングの為にあるのではなく、波しぶきをよける為にあります。水に立ち込む際は、普通の長靴で入っていける範囲(膝下)と考えましょう。
潮位の変化に気をつける
河口や汽水域でのウェーディングも潮の変化を受けます。潮が満ちて退路がなくなるといった事もありますので、常に潮の変化や流れには気を配って無理をしないようにしましょう。
レンタルボートからの落水
レンタルボートで這い上がる時は船尾から
小さなボートの船上は非常に不安定な場所で常に落水の危険がつきまといます。また、落水後に小さなボートの横から這い上がろうとすると、バランスを崩してボート自体が転覆する事もあります。船へ這い上がる時は必ず船尾から、船上に残ったものが救助するときも船尾から引き上げる、と覚えておきましょう。
這い上がられなければ岸を目指す
足がつかない場所では、船尾から這い上がる事も困難な場合があります。そんな時は落水者をボートのへちに掴まらせたまま、浅瀬や岸を目指します。単独釣行時に落ちて這い上がれないようであれば、一度へちに掴まり気持ちや呼吸を落ち着けて、ボートをビート板のようにしてバタ足し、浅瀬を目指します。
走行中の船から落水したら
もしエンジンつきの動いている船から落水した際、焦って船や船の船尾に近づいてしまうとエンジンに巻き込まれる危険もあります。まず落ち着いて大の字に手足を広げ浮力を確保し、船長の指示に従いましょう。
釣り場の安全装備
※こちらでご紹介する商品を着用・使用をしたからと言って事故を100%防げる訳ではありません。一番大切なのは水難事故を未然に防ぐ事です。ライフジャケット・スパイクシューズといった装備は勿論の事、単独釣行を避ける、天気予報をチェックする、危険な場所で釣りをしない、といった釣り人自身の危機管理・心がけが最も重要です。
ライフジャケット
大前提として、釣りをするのであれば、それが船であれ岸であれライフジャケット着用は必須です。一番望ましいのは、浮力材内蔵式のベストタイプですが、腰巻きタイプ・膨張式と様々なタイプがありますので、例え面倒であっても必ずライフジャケットを着用するようにして下さい。
滑りにくいシューズ
釣り場では滑りにくいシューズは必需品です。その他の平坦な釣り場でも濡れていたりコケがあったりと、釣り場全般は非常に滑りやすくなっていますので、グリップ力の高いシューズを選びましょう。
ダイワ フィッシングシューズ DS-2301HV
高いグリップ性能を発揮する日進ゴム株式会社の「ハイパーVソール」を搭載したフィッシングシューズ。
ダイワ フィッシングシューズ DS-2101QS
立体構造のゴム底にスパイクピンを10本装備したフィッシングシューズ。
ダイワ フィッシングシューズ DS-2300QR-HL
「キュービックスパイクソール」を搭載したフィッシングシューズ。ゴム底にスパイクピンがついています。
シマノ ドライシールド・ラジアルスパイクシューズ
グリップ力を高めるスパイクピンが8本埋め込まれてています。
防災・アウトドア用ホイッスル
いざ落水した時に、大声を出し続けて助けを呼べますか?テトラの隙間に埋もれてしまったとき、沖合に流された時、真冬の冷たい水の中で大声を出すのは体力の消耗にもつながります。ライフジャケットに一つ結びつけておき、いざという時に備えましょう。
救命ロープ
磯に行く方は持参したい装備です。磯以外でもレンタルボート釣行の船内や、車に積んでおき、もしもの時に備えましょう。
落水・溺れた人を見かけたら
飛び込まないのも勇気の一つ
例え落水した人を見かけても、いきなり助けに飛び込んではいけません。溺れている人はパニック状態にあり、素人が泳いで助けにいくと、それに引きずられ二次災害の発生リスクが高まります。ライフセイバーや海難救助のプロであっても道具を持たずに救助に向かうことはありません。
①まずは落ち着く
落水者のみならず、救助者がパニック状態にあってはまともな救助は出来ません。まずは落ち着いて周囲の状況を確認します。手助けしてくれそうな人がいないか、役に立ちそうな道具(浮くもの)がないかなど、周囲を見渡す事により気持ちを落ち着かせます。
②落水者に声をかける
落水者がこれ以上パニックにならないよう声を掛けます。「落ち着け!」「助けにいく!」など、自分が落水者に気づいたことを知らせる事で落ち着きを取り戻すケースもあります。また、落水者の背後など、落水者が気づかない所に掴まれるものがあれば指示を出しましょう。
③周囲に協力を求める
周囲に人がいれば、落水者から目を離さず大声で協力を求めましょう。「人が溺れています!119番に電話して!」「何か浮く物をもってきて!」など自分一人では出来ない事でも協力者がいれば同時に行える事もあります。
④救助の要請をする
海の事故は「118番」
川・湖・池の事故は「119番」
人が溺れている事・具体的な場所・どんな状況かを、簡潔に落ち着いて通報してください。※具体的な場所は地元の人のほうが詳しい事もありますので、場所を聞くなり、電話を変わるなり、臨機応変に対応しましょう。
※海上保安庁は、海上における事件・事故の緊急通報用電話番号として、警察の110番や消防の119番のように局番なしの3桁電話番号「118番」の運用をしています。海の事故で119番かけても海上保安庁に転送されますのでご安心ください。
救命ロープ・浮くものを見つけ投げ入れる
ライフジャケット・浮き輪・救命ロープなどが身近にない時は、浮輪の代わりとなるものを探して投げ入れ、落水者に掴まらせます。
※クーラーボックス
※バッカン
※どちらも中身を抜いてフタを締めたもの
・1.5リットル程度のペットボトル×数個
時には無理に引き上げない事も重要
救命ロープに掴まる事が出来ても、急に引き上げてはいけないケースもあります。例えば大きな波がある時に落水者を磯や堤防から引き上げようとすると、岩、岸壁、テトラに体が打ち付けられ、大ケガをする危険があります。そんな時は救急隊の到着を待つか、危険なものがない浅場があるようであれば、そこまで引っ張って誘導します。
自分は平気がいちばん危険
今回ご紹介したのは釣り場における落水のすべてのケースではありません。釣り場はいつ水難事故にあってもおかしくない場所である事、その自覚をする事が危険を回避する最初ステップです。