スモールマウスバスの質問、全部返す。
ラージマウスバスに比べてしまうと、稀有な存在とも呼べるスモールマウスバス。その生態も知られていない事が多く、インターネットを見ていていても、なんとも不思議な噂が囁かれている事も。
それは、ガイド業をしていても感じる事で、スモールマウスについて誤解している方、極端に捉え過ぎている方が多いのでは? と感じています。今回は、スモールマウスについてはまったくの素人で、インターネットの噂を鵜呑みにしてしまう、編集部O氏の質問に答えます!
Q.ラージに比べ回遊性が高い?
スモールマウスはラージマウスと比べると回遊性は高いと思います。ただし、環境によって変化します。それはラージも一緒ですね。
例えば、ただっ広くてストラクチャーが乏しい環境なら、回遊性は強まりますし、桧原湖のようにストラクチャーが豊富な環境なら、場所や物に執着する個体も現われます。
さらに言うと、エサ次第でも、もちろん変わりますね。桧原湖ではメインベイト=ワカサギと一括りに思われがちですが、じつは年によってワカサギに完全に寄る年、エビに寄りがちになる年、ゴリ系に寄りがちになる年があります。それによって、毎年魚の回遊性の高さに、少し変化があります。
Q.カバー撃ちをする事もある?
カバー撃ちでも釣れます。桧原湖でラージ狙いでカバーを撃っていても、スモールが釣れる確率の方が高いですね(笑)
ただ、スモール狙いの釣りと考えた場合、カバー撃ちが、他の普通のスモールの釣りより数が釣れるという状況は稀です。
普通のスモールの釣りが難しくて、釣れない状況でカバー撃ちをしたら何匹か釣れてくれたり、もしくはよりデカい魚が釣れたりする事はありますね。
Q.ラージに比べ引きが強い?
身体能力が高く、回遊性が強くて筋肉が発達しているから、引きが強いという理屈は非常に腑に落ちるのですが、実際釣り比べてみてスモールの方が引きが強いとは、あまり思わないんですよね……。
例えば、普段からスモールをメインに釣っている僕ですが、七色ダムや早明浦ダム等で「ここの魚(ラージ)めっちゃ引く!!」と思った事は多々ありました。
逆に、強い湖流の中で生活していて筋肉隆々になったスモールも、引かない魚は全然引きません(笑)ですので、何とも一概には片付けられないですね。
ちなみに、僕がスモールを釣っていて一番引きが強いと感じるのはポストスポーンから回復した状態のアフターの時です。中でもシャロー~ミドルの魚。
時期や水深によって水温も酸素量も違いますし、時期や水温で代謝も上下するでしょうし、抱卵状況や、直前に食べているエサの量等によっても違いが出ているんだと思います。(あくまでも予想です)
1年で最もスモールを釣り易い、アフタースポーン期だけスモールレイクに遠征で釣りに来る方も多いので、その辺もスモール=引きが強いと言われる原因なのかなぁ…….と思ったりもしています。
Q.高水温では釣れない?
スモールはラージよりも酸素量が必要な魚だと言われています。確かに、過去に思い当たる経験をした事が何度かありますね。水は水温が低い方が溶存酸素量が増えますから、スモールは高水温は苦手と捉えて良いと思います。
だからこそ、水温が高い夏場は、より水温が低いディープや湧き水周辺に集まったり、暑さが和らぐタイミングでよく釣れたりします。
高水温下で流れも発生しない状況は……基本的に難しいですね(汗) ちなみに真夏の桧原湖では、魚達はサスペンド傾向となり、ディープの中層に浮く事が多くなります。それをいかに攻略するかがカギですね。
Q.流れ(酸素量)は欠かせない?
先述した通り、スモールはより酸素量が必要な魚ですから、大事です。ただ、桧原湖に関して言えば、夏場に流れ込みが爆発って事は少ないですね。釣れはしますが。流れ込みよりもディープの方が好きみたいです(笑)
また、風により発生する波や湖流はあった方が、活性が上がる事がほとんどです。
Q.夜に捕食する?
夏に限らず夜間、もしくは薄暗い時間帯に捕食する事はありますが、やはり夏場はよりその傾向が強いと思います。ただでさえも高水温で陽が高い時間は難しい夏場、夜にエサを食べちゃっているなんて……深く考えないようにしましょう(笑)
Q.真冬ならラージより釣れる?
真冬に釣り易いか否か。ラージでもスモールでも同じだと思いますが、水温が低いなりにも安定していて、少しでも居心地が良い場所があれば、比較的良く釣れます。
例えば桧原湖のアイスフィッシング。湖が結氷しているが故に、風による流れの影響を受けない為、魚達は元気です。比較的体力がある30cm以上の魚なら、氷の下でも結構泳ぎ回っていますね。そして良く釣れます。
結氷前は風により発生する流れを嫌って、その影響を受けにくいスーパーディープにどんどん落ちて行くのですが、結氷したらどんどん浅い方に移動して行きますよ~。
Q.どう猛かビビりか?
やはり、臆病な印象は受けますね。
警戒心が強まっている状況下では、感覚器官が優れているが故に、かなり遠方でもボートに気付いて逃げます。水深10mディープでも同じ。昔から「ディープでも本当にボートから逃げるよな~」なんて思っていましたが、ライブスコープを付けて見てみたらボートから30mの距離を保って逃げている時も結構ありました(笑)
一方で、警戒心が薄まっている時は、意外と逃げません。
彼らは、身体能力が高い故に、狩りの能力も高いです。そしてスイッチが入ってしまうと、我を忘れてしまったかの如くルアーにもアタックして来るので、そういった部分から獰猛と言われるようになったのかもしれませんね。
ちなみに、獰猛な肉食魚である事と、ルアーを見たら全力で逃げる事は、切り離して考えた方が良いと思います(笑)
どんなに獰猛でも、リスクや脅威を感じたら逃げるのが生物ですから。彼らは大きくてせいぜい50〜60cmくらいまでの魚類。身に降りかかる脅威から逃げる準備は、常にあるはずです。
Q.ラージと比べて目が良い?
目は良いと思います。更に言うと、側線が発達していると思うんですよね。
水の透明度的に目では確認できないような場合でも、想像以上に遠くからでも、ルアーに気付く場面を何度か経験しています。皆さんが経験した「スモールって目が良いな!」と思う出来事は、目だけでなく、側線の働きによるものかもしれません。
僕がいつも、スモールはやっぱり目が良いな。と思うのは波立っている時の水面放置パターン。桧原湖なら、風速4mの風下で、そこそこ深い場所でも水面で放置したi字系ルアーを見つけて、どんどん食って来ます。
この場合は側線で感じ取ったと考えるよりも、目で見て食いに来ていると考えた方が自然ですから、毎回「目が良いな~」と関心しますね。とは言ったものの、自分の中では水面放置パターンでも、じつは側線で感じ取っているのではないか説が消えていませんが(笑)
一方で、「ラインが太くて、フックが大きくて、見られてしまって食わない」という考え方はあまりしません。もちろん極端に太過ぎ、大き過ぎるとルアーの姿勢や動き、操作性に影響が出て釣れなくなってしまいますが、それに影響を及ばさない程度であれば太め、大きめでも問題ありません。
ラインは見た目よりも、ラインが動く時に出る波動や、水面とラインの接点から出る波紋は、バスが危険な物と認識しがち。フックはケースバイケースです。
ラージと比べてスモールのサイトが難しいとはあまり思いません。むしろ、バスがこちらに気付く前に、アプローチできれば釣れる可能性は高いし、気付かれている状態でもバスの意識を、ボートよりルアーに向かせる事ができれば割と釣り易いと思います。
Q.水深10mからでもトップに出る?
この手の話はスモール逸話でよく耳にする話ですが、ずっと10m付近に居た魚が、水面まで浮いて来て食うという経験は、今の所ありませんね。
10mボトムの中層を泳いでいる魚が水面に出た。ボトムに入ったり、中層に浮いて来たり、水面でボイルしたりを繰り返し、縦横無尽に幅広い層を泳ぎ回っている魚が、“浮いて来たタイミング”でルアーを見つけて、水面に出た。そんな感じだと思います。
ただ、水中を縦方向に自在に泳ぎ回って狩りをする能力が高いのは間違いないと思います。水深4~5mに居たバスが水面に出る。水深10mのボトムに居たバスが、中層5mまで浮いて来て食う。このくらいであればよくあります。
Q.スモールマウスハードルアー(大きなルアー)は不向き?
確かにスモールは感覚器官が優れており、臆病な一面があるためライトリグの釣りは必須です。また、日本のスモールマウスフィールドのほとんどは水の透明度が高くライトリグ優勢になりがちな事も、そんなイメージが先行する理由でしょう。
しかし、当然濁りが入ったり、風で波だったりすれば大きなハードルアーも活躍します。大きなルアーにはバスにスイッチを入れる力もありますから、それを利用して襲わせる釣りも存在します。
大きくても大丈夫かな?ではなく、大きさを利用する考え方をしてみましょう。
活性が低めの低水温期で、ビッグベイトのボリューム感でリアクション要素を高める。大きなペンシルベイトで大きな飛沫と音を出して捕食スイッチを入れて襲わせる。大きなクローラーベイトで、デカいスモールマウスに威嚇的に襲わせる等、大きさを利用する釣りはありますよ。
Q.点を意識しろ?
巻きでは食わずに放置、スローがよく釣れる……というのはスモールマウスフィッシィングの一部を切り抜かれた情報ですね。釣り人ってどうしても、見聞きした“極一部の限られた一面のみ”で、それを語ってしまう事が多いので、気を付けなくてはいけません。
むしろスモールは、横に泳がして、浮かせてもよく釣れる魚。表層引き、ハイスピードハードベイティング、ミドスト、巻きキャロ……横方向に巻いて釣るメソッドは沢山あります。
“放置”についてですが、放置が釣れる理由を考えた時、いろいろな理由があるとは思うのですが、中でも多いのが「人間が動かした時の不自然さを嫌っているから」だと思います。
この傾向はハイプレッシャーで水が綺麗なフィールド、状況で当てはまり易いですね。
Q.マッチザベイトがラージ以上に重要?
ルアーの観察能力に長けたスモールマウスですから、マッチザベイトの考えはラージ以上に持っていた方が良いかもしれません。
しかし。マッチザベイトと聞くと、ルアーの大きさや形、色をエサに近付ける……というイメージが大きいでしょうが、魚達がエサを認識し、狩りをする上で、目と同等か、それ以上に頼っているかもしれない「側線」の存在を忘れてはいけません。
大きさや形がエサと違っていて、一見マッチザベイトと関係なく見えても、ルアーが出す「波動」がエサに似ていればそれもマッチザベイト。波動が似ていなくても、スピード感や雰囲気が似ていればマッチザベイト。ルアーフィッシングの本質的な所ですよね。
例えば、僕にとって、ジャッカルのポンパドールはエビとマッチザベイトです。
もちろん、マッチザベイトと関係ないルアーでスモールを釣る事もできます。威嚇、排除、興味等で口を使わす感じですね。ビッグバドや羽根モノなんかはそれだと思います。
羽根モノに関しては、セミを食べている魚が良く食って来る事もある反面、明らかな排除的バイトをして来る事も。同じルアーでも、捕食気味で食う場合、威嚇的、リアクション的に食う場合といろいろです。
Qマッチザレンジもラージ以上に重要?
先述している通り、スモールは水中を素速く縦方向に移動しての狩りが上手いですから、とくにバスが食い気で食って来る時についてはレンジは全然シビアではありません。
食いたければ、ルアーが泳ぐレンジが2mだろうが3mだろうが、追いかけて来て食います。ですから、ミドストや巻きキャロなんかはレンジって、それほどシビアに考えなくてもOKなんです。4~5mに居た魚が水面まで食いに来るんですから、そりゃそうですよね。
ただし、サーモクラインを跨いでしまうとルアーへの追いは悪くなりますのでそれには注意が必要です。
また、活性が低く食い気が無いときはレンジにシビアです。ハードベイトでリアクションを狙うにしろ、食わせで無理やり食わせるにしろ、レンジ合わせ、そしてレンジキープが大切になります。
Q浮かせて釣るのが良い?
スモールは目線上にルアーを通して浮かせてやればよく釣れる。と昔から言われていますが、縦方向に追いかけての狩り、捕食も得意が故にそう言われるようになったんだと思います。
ですので、「浮かせて釣るのが良い」というより「浮かせて釣るのも良い」という方が正しいかもしれません。逆に、中層の魚をボトムまで呼んで“沈めて釣る方法”も、とても良く釣れますからね。
水面とボトムは、ベイトがそれ以上先へ逃げられない壁となり、そこに追い込んでいるという説も一理ありますが、中層でもよく食っているし、よく釣れます。
1つ言えるのは、最終的に食わせるのが水面でも中層でもボトムでも、上下方向に追わせる事で捕食のスイッチが入るキッカケにはなると思います。
Q.マズメは関係ない?
シーズン通して、だいたい朝夕マズメは関係があり、とくに凄いのは春。逆に、マズメの威力が薄れるのはアフター時。
マズメが釣れなくなるのは、夏~秋の移行期等の季節の狭間期。真冬のアイスフィッシングでも朝夕はイマイチ釣れませんね。アフターは基本的に暖かい時間帯の方が元気だと思いますが、他のシーズンはやはり朝夕のマズメ時に食い気が上がります。
とくに春のプリスポーン時は、多くのバスが人間が狙い易いシャローに集まった状態で、食い気が上がり単純に狙える範囲内の個体数が多いので、とくに爆発力が上がります。
一方、マズメが釣れなくなりがちな季節の狭間期は、マズメ時に活性は上がるものの、バスが浮いて泳いで沖のどこかに行ってしまうため、狙う事ができず釣れません(笑)
Q.雨(濁り)の恩恵を受けやすい?
桧原湖の場合、雨で濁りが入る事は相当な大雨は降らない限りあまりありませんが、雨も濁りも、とくに濁りはウェルカムです! 濁りが入った時の釣りは大好きですね。その辺については、過去の僕の記事を見返して頂ければと思います。
雨はケースバイケース。雨パワーでめっちゃ釣れる事もあれば、釣れない事も。ある程度適水温内だったり、低水温でも春の水温上昇傾向時の低水温なら、雨でも多少水温が下がってもよく釣れる事はあります。
晩秋の冷たい雨2日目のシャローとか、暖かい時の方が元気はアフターの時は、冷たい雨がマイナスになると事も多く、やはり季節の移行期等に雨が降ると、バスが沖のどこかに行ってしまって釣れなくもなりますね。
Q.スモールマウスはピンクがお好き?グリパンしか勝たん?
ピンクもグリパンも良く釣れる色ですね! どちらも釣れる色ですが、ピンクは基本、浮かせる釣りの基本色であるのに対して、グリパンはボトムで釣る時の基本色。どちらも背景色に馴染みやすい色ですね。
ピンクは派手に見えますが、下から見上げて青空や雲をバックにすると意外と馴染み、少しだけ存在感を放ちます。(一口にピンクと言ってもいろいろなピンクがありますけどね)多くの魚のお腹の色が白なのもこれが理由だと思います。保護色ですよね。
一方、グリパンはやはりボトムの色と同系色である場合が多く、やはりあらゆる水中の生き物の保護色。ワカサギだって、上から見れば緑です。ボトムにあるグリパンのワームは、自然界にありふれた色故に警戒され難く、釣れ易いと言えます。
浮かせる釣りにおいてのスモール=ピンクのイメージはかなり定着していますし、実際良く釣れます。ですが、他の浮かせる釣りの定番色であるホワイト、チャートと比べて突出するか?と言われると、そこまでの物ではありません。
ホワイトがより釣れる時、ピンクがより釣れるとき、チャートがより釣れる時、なんでも釣れる時(笑)いろいろな時があると思います。
グリパンも一緒で、ボトムの釣りをする時に1色だけ選ぶならやはりグリパンですが、さらに薄いスモーク系が良い時や、さらにハッキリとシルエットが出るブラックが良い時と様々。
ちなみに、ピンクの中でも比較的薄めで桜色っぽいピンクはボトムでも馴染みやすくオールラウンドに出し易いです。一方で、ブルガムピンク、もしくはドチャートのように、ボトムに一切馴染まないけど、それがまたよく釣れる状況も存在します。
Q.スモールマウスはラメがお嫌い?
ラメがあっても普通に釣れますね。むしろ僕は赤ラメとか大好きです。他の色よりもブルーギルカラーの方が釣れる事もあります。
ただ、クリアアップして透明度が高い上、晴れてハイライトなコンディションでは避ける事が多いです。
ラメも大きさや密度によってかなり印象は変わるので、ハイプレッシャー下で、あまりにもキラキラし過ぎているカラーをボトムで使う事は僕も避けがちです。
しかし、単純に周りが使っていない色がよく釣れる。なんて事もゼロではないので、試してみる必要はあります。
Q.スモールマウスは春しか勝たん?
活性が高い……というか、ルアーをどんどん食べてしまうのはアフタースポーンの時ですね。6月です。春のプリスポーン期は春爆に当たれば凄まじいけど、釣れないタイミングは本当に釣れない……これはラージも一緒ですね。確かに夏の高水温期は厳しい日が多く、全体的な釣果も落ち気味です。ただ夏は夏で、例え難しい日でも、もちろん攻略する方法はありますし、桧原湖のような避暑地で釣りをするだけでも気持ち良いですよ。
梅雨~初夏と秋~晩秋をやならないのはモッタイナイですね~(笑)
梅雨~初夏はアフター回復しているけど、まだまだ警戒心より食い気が立っている状態で、フットボールや高比重ノーシンカー等のベイトタックルの釣りでどんどん食って来ますし、秋以降の表層でのバイトラッシュは春のそれと遜色ありませんし、晩秋の越冬場所は数釣りが楽しいです。6月以外も是非来てくださいね!
生き物は、環境によって変化する。
確かに、スモールマウスはラージと違った部分があり、それが釣りに反映もされます。
ただ、「ラージはこうで、スモールはこう」「スモールはこういう魚」と極端に捉えてしまうのはNG。彼らは生き物ですから、環境によって変わります。
ラージとスモールの違いを、ほどほどに頭に入れつつ、意識し過ぎない程度に抑えながら、普通のバスフィッシィングとしてゲームを作っていくのが攻略の近道だと思っています。