他の魚と“よく似ているから”名付けられた魚たち
ウッカリカサゴ

多くの人がカサゴとうっかり見間違えてしまう程よく似ているため、『ウッカリカサゴ』と名付けられました。

カサゴとウッカリカサゴは、胸鰭の軟条数がカサゴ18本前後に対し、ウッカリカサゴは19本前後という違いから科学的に見分けることができます。
ウッカリカサゴは、カサゴ属の種類としては大型で、最大40~50cmまで成長すると言われています。大きなカサゴが釣れたら胸鰭の骨の数を数えてみましょう!
マハタモドキ

こちらもまさに「モドキ」という名に相応しい『マハタモドキ』という魚です。

マハタは、尾びれから数えて2番目のバンド模様(横縞模様)が、2本に分かれている or 分かれかけていることで見分けられます。綺麗に一本の場合は『マハタモドキ』です。
他にも尾びれの縁取りが白い場合は「マハタ」ですが、縁取りが不明慮な個体もいるようです。
タナゴモドキ

タナゴという名前の小さな川魚をご存知でしょうか? タナゴはコイの仲間で、繁殖期になると色鮮やかな婚姻色を身に纏います。
そんなタナゴの色に負けず劣らずの発色を見せる、ハゼの仲間が沖縄県などに生息しています。

『タナゴモドキ』は、最大で7cm程度と小さな姿や繁殖期に雄が鮮やかな婚姻色に変化するといった生態がタナゴに似ているため名づけられました。
ちなみに、コイの仲間であるタナゴは一生を川で過ごすのに対し、ハゼの仲間であるタナゴモドキは、仔魚期を海や汽水域で過ごします。
毒があって“危ないから”ついた名前
キタマクラ

フグの仲間である『キタマクラ』は、皮と内臓に強い毒を持っています。
誤ってキタマクラを食べてしますと、死んでしまう……つまり、「北枕に寝かせないといけない。」という何とも恐ろしい名前を持つ魚です。
海釣りをしていると頻繁に釣れる魚ですので、間違っても持ち帰らないように注意しましょう。
スコーピオンフィッシュ

Scorpion(スコーピオン)とは、サソリという意味ですね。サソリといえば鋭い毒針を持つ危険な生き物です。
日本ではオニカサゴだったりミノカサゴと呼ばれる、いわゆる毒針を持ったフサカサゴの仲間を英語で『Scorpion fish(スコーピオンフィッシュ)』と呼びます。
万が一、オニカサゴやミノカサゴに刺された場合は、痛み止めを服用し、45度のお湯に患部を1時間程度漬けましょう。
意識障害やめまい、呼吸に違和感が出た場合、アナフィラキシーショックを起こしている可能性があるので、躊躇せず救急車を呼びましょう。
ドクウツボ

ウツボの仲間で世界最大級と言われる『ドクウツボ』は、全長最大3mにまで成長すると言われています。
毒蛇のように噛まれたら、さぞヤバそうな名前が付けられていますが、牙から毒が注入されることはありません。
ドクウツボが持つ毒はシガテラ毒と呼ばれ、毒に汚染された筋肉や内臓を人が食べることにより中毒症状を起こします。
▼ドクウツボを狙った釣行記はコチラ!
姿かたちが“特徴的すぎて”名付けられた魚達
アリゲーターガー

Alligator(アリゲーター)とは、ワニの仲間を現す英語です。『アリゲーターガー』は、まるでワニのような大きさと姿をしているため、そう名付けられました。
北米に生息するアリゲーターガーは全長最大3m程度にまで成長し、100年近く生きるのではないかと考えられています。
怖そうな名前が付けられていますが、性格は比較的おとなしく、ワニのように人を襲うことはありません。また、同種間でほとんど争いを行わず、のんびりとした生活をしている魚です。
ちなみにアリゲーターガーは1億年前からその姿を変えておらず、代表的な古代魚とも言えるでしょう。
▼推定75歳のアリゲーターガーを釣り上げた釣行記はコチラ!
アカグツ

本州以南の水深100~400m前後に生息する『アカグツ』は、広い意味でアンコウの仲間と言って良いでしょう。
鮮やかな赤い体色に、平たくて脚が生えているような何とも特徴的な魚体をしています。
アカグツを漢字で書くと赤靴と表現することもあるようですが、名前の由来は「赤いクク(カエルの古語)」という説が優勢なようです。
クロホシマンジュウダイ

お饅頭のような平たい魚体に、黒い点々模様が特徴的な『クロホシマンジュウダイ』は、広い意味でアイゴやニザダイの仲間です。
クロホシマンジュウダイの学名はScatophagus argusとなっており、Scatophagusを直訳すると糞を食べると言う意味になります。
糞を食べるとは言いすぎですが、実際にクロホシマンジュウダイは何でも食べる雑食性の魚として知られています。
“カッコいい”名前の怪魚たち
スレッドフィンパラダイス

横文字がリズミカルに並んでカッコ良く感じる『スレッドフィンパラダイス』。インドネシアに生息する淡水魚で、広い意味ではスズキの仲間です。
Thread(スレッド:糸)Fin(フィン:鰭)Paradise(パラダイス:楽園)、つまり「糸の楽園のような鰭を持つ魚」という意味になります。
その名の通り、糸のような長い胸鰭が特徴的で観賞魚として人気があります。
キングサーモン(マスノスケ)

King(キング)とは、説明するまでもなく“王様”を意味する言葉で、『キングサーモン』はサケの仲間の王様にふさわしく、最大で130cm、50kg程度まで成長すると言われています。
日本語ではマスノスケ(鱒の介)と呼びますが、「キング」よりも「介」の方が意味が分からない……という方が多いのではないでしょうか。
「介」とは、国司の四等官の内のひとつで、端的に表現すれば権力者を意味します。
中世の頃の人々は、サケやマスの中で一番の権力者という意味を込めてマスノスケと呼んだのでしょう。
ジョン ドリー

名前の由来に皆目見当もつかない魚がいます。その名は『John Dory(ジョン ドリー)』。イケメン男子を想像したくなる名前ですが、ジョンドリーの正体はなんと、マトウダイなんです。
マトウダイは太平洋・インド洋・一部大西洋と非常に広い生息範囲を持つ魚で、英名にジョンドリーという名前が付けられています。ちなみに語源は諸説あり明らかではないようです。
日本語としては、馬面だから馬頭鯛(マトウダイ)と呼ぶという考え方が一般的で、場合によっては的のような模様から的鯛(マトダイ)と呼ばれることもあるようです。
“ギガス・ジャイアント”と名のつく巨大魚達
パンガシアノドン ギガス

ラテン語を使って生き物に与えられる世界共通の名前として「学名」という呼び名があり、“gigas(ラテン語で巨人の意味)”と付けられている魚がいくつかいます。
Pangasianodon gigas(パンガシアノドン ギガス)と名付けられたのは、『メコンオオナマズ』と呼ばれる世界最大級の淡水魚です。
東南アジアを流れるメコン川の固有種であるメコンオオナマズは、全長3m、体重300kgにまで成長すると言われています。
アラパイマ ギガス

Arapaima gigas(アラパイマ ギガス)は、皆さんご存知『ピラルク』に与えられている学名です。
南米大陸に生息するピラルクもメコンオオナマズと並び世界最大級の淡水魚とされ、全長最大3m程度まで成長すると言われています。
▼ピラルクに関する記事はコチラ!
ジャイアントキャットフィッシュ

2mを超えるような巨体を持ちながらも、学名にgigasという名を与えられなかった巨大魚は数々います。
最大で3m、200kg前後まで成長する『ヨーロッパオオナマズ』(学名:Silurus glanis 英名:Wels catfish)もそのひとつでしょう。
▼100lb越えのヨーロッパオオナマズを釣り上げた釣行記はコチラ!
さいごに
いかがでしたでしょうか。今回は僕が今までに出会ってきた面白い名前を持つ魚達をご紹介しました。
世界にはまだまだ、「えっ?」って思わず声が出てしまうような魚の名前があります。これからも、色んな魚との出会いを大切に魚釣りを楽しんでいこうと思います。
筆者紹介
山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活動中。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017