じつはギンポの仲間?!オオカミウオの生態や生息地について
オオカミウオ(ウルフフィッシュ)とは
オオカミウオは、スズキ目ゲンゲ亜目オオカミウオ科オオカミウオ属に分類され、日本では東北地方以北の水深10~100m前後の岩礁帯に生息しています。
オオカミウオの仲間は世界で5種類が知られ、その名の通りWolf(狼)fish(魚)と呼ばれ、いずれの種類も水温の低い海域に生息しています。
ちなみに、身近な魚としては江戸前の天ぷらのネタとして有名な「ギンポ」という魚もゲンゲ亜目に分類されます。
▼ギンポの記事はコチラ!
強靭な顎で餌を嚙み砕く
オオカミウオは、貝やカニといった生物が大好物といわれます。特徴的な大きな牙と強靭な顎の筋肉を使ってホタテやカニをバリバリ食べるというから驚きです。
ちなみに日本でこそ流通量が少ないため市場には出回りませんが、アイスランドやグリーンランドなどでは食用魚として漁獲されています。
もちろん、釣れれば食レポまで書かせていただきますよ!
オオカミウオの最大サイズは
一般的にオオカミウオの最大サイズは100~120cm、体重は10~15kg程度と考えられています。
頭が大きいこともあり、1mを超える個体の迫力は満点! 「いつか必ず釣ってみたい!」そう思っていました。
今回の記事は、オオカミウオを釣って食べてみる釣行記です。ぜひ、お楽しみください!
オオカミウオを狙って釣れる場所と時期について
オオカミウオを釣るなら知床・ウトロ
東北地方以北に生息するというオオカミウオですが、狙って釣るとなるとできるだけ北へ向かうに越したことはありません。
日本の北の端っこで岩礁帯……そう、世界遺産でもある知床半島こそオオカミウオ釣りに打ってつけの場所です!
今回お世話になったのは「牛若丸」
オオカミウオ釣りといえば、北海道斜里町ウトロ港から出船している牛若丸が有名です。
僕の友人知人たちも皆、牛若丸でオオカミウオを釣り上げています。もちろん、僕も牛若丸に乗船してきました!
いささか強面の船長さんですが、女性には優しく釣り方を伝授してくれます。船内にトイレもありますよ!
●牛若丸のHPはコチラ
オオカミウオ釣りは“夏”がオススメ
オオカミウオは夏によく釣れる魚ということで、言わずもがな夏の短い知床半島では7-8月の2ヶ月間がベストシーズンとなります。
夏とはいえ、オホーツクの海は風が吹いたり雨が降ったりすると大変寒いので、服装には気を付けましょう。
オオカミウオの釣り方、仕掛け、餌について本気で考えた
怪魚釣りは、釣りの腕よりも情報量と運が大事
既にオオカミウオを釣り上げた経験がある友人から、オオカミウオ釣りについて詳しく教えていただきました。
端的に箇条書きで列挙すると以下の通りです! オオカミウオ釣りにチャレンジされる方は参考にしてみてください。
■オオカミ魚釣りのタックルとコツ
- ●ソイやタラなど餌取りが多い
- ●根の荒い岩礁帯がポイント
- ●道糸PE3号、リーダーナイロン100lb、ハリスナイロン100lb(歯は鋭くない)、捨て糸30lb
- ●親子サルカンを使った胴突1本針(ハリス長40~50cm、捨て糸長40~50cm)
- ●オモリ120-150号、水深25~120m
- ●ジギングタックルorオモリ負荷80g程度の船竿
- ●潮が早いと釣果が出しにくい、緩んだ時に集中すべし
- ●根掛かりに注意しながらも底取りをマメに行うべし
オオカミウオ狙いの仕掛け
オオカミウオは、スルメイカを丸ごと付けた胴突仕掛けによる餌釣りで狙います。
使用する針は、ジギングフックの5/0前後がオススメとのことでした。
根掛かりで浪費するのが心配な方は多めに用意しましょう。心配性な僕は2人分としてオモリとフックそれぞれ10個ずつ用意しました。
万が一に備えスルメイカを本州から発送
知床の遊漁船なんて滅多に乗れないので、「一回の釣行で何とか釣果を上げたい!」と必死な僕は、餌のスルメイカが港近くで買えないことに備え、スルメイカ30杯を事前に手配し斜里町のヤマト運輸営業所へ発送していました。
前日にもスルメイカを20杯追加購入し、用意したスルメイカは2人分でなんと50杯。陸上でできる準備は完璧に整える! それが僕流の怪魚ハンティングなんです!
いよいよオオカミウオ釣り本番!知床ウトロ沖オホーツク海へ出船
無風ベタ凪“オオカミウオ絶好の釣り日和”
待ちに待った出船の時。どんな釣りでも、この瞬間は色んなことを考えながらワクワクしちゃいますよね!
この日の天候は曇りのち晴れ、無風のベタ凪、そしてなにより緩流です。
潮回りは長潮、潮流が緩い方が良いと聞いていたので、この日を選んで予約していました。
オオカミウオ釣りの餌はスルメイカ丸ごと!それも2杯掛け!
ポイントにつくと、船長から『イカが小さい!2杯かけてヤレ!』とアドバイスをいただきました。
それもそのはず、着底したと同時に「コツッ……コツコツッ!」っと小さな当たりが連発します。
試しに回収してみると、1杯は丸ごと取られ、残りもゲソがありません。ほら! 大量にイカ買っておいて良かったでしょ?(笑)
常に魚が当たり続けている……ん?重たいぞ
きっと、ゲソなんて無くても食欲旺盛で貪欲なオオカミウオは食ってくるはず! コツコツ当たっているってことはまだ餌が残っている証拠だ!
そう決めつけて、長めに待っているとどうにも仕掛けが重たい気がします。もしかして、小さなオオカミウオかな? 恐る恐る上げてみると、大きなカジカが掛かっていました……。
僕がカジカを2匹釣っている間に、同船した相方が2本立て続けにオオカミウオを釣り上げてくれました!
ひとまずオオカミウオ坊主は回避となりホッとしましたが、やっぱり僕も釣りたいところです!
平常心を装っていますが、内心は時合が終わってしまうのではないかと非常に焦っております。
ついにオオカミウオがヒット!
ウツボのような当たりが来た!きっとこれは。
オオカミウオがどんなアタリなのか、引きの強さは……やっぱり自分の手で感じてみたいものです!
焦る気持ちを抑え、根掛かりしないように集中しながら海底ギリギリを丁寧に攻めていると。「グングン!」と強めの前アタリの後、「ぐ~ぅん」と優しく引き込むようなアタリがきました!
小物たちとは違う重量感です! これは間違いないぞ!
大アワセ!からのリフトアップ!さぁー上がってこい!
お願いだから吐き出さないで! と祈りながらも焦らず、竿を下げながら2杯のイカをしっかり食わせます。
自分の気持ちを整え、渾身のフッキング!「ヨッシャー乗った!!」あとは、一定のスピードでガンガン巻き上げます!
うおぉーー!オオカミウオだぁー
激しく抵抗することなく、とんでもない重量感だけで上がってきたのは夢にまで見たオオカミウオです!
ネットに入った瞬間こみ上げる嬉しさ! 怪魚ハンティングの楽しさはこの瞬間に凝縮されます!
この快感が病みつきになっちゃうんですよね! やっぱ魚釣りって最高に楽しいッ!
また1つ、夢が叶いました
実際にオオカミウオを触ってみると、ウロコは無くスベスベとした感触。ウツボに近いと表現しておきましょうか。
フィッシュグリップを通して感じる牙や顎の力は凄まじく、噛まれたら骨折しそうです。
一生の思い出になる写真を撮影していただき、また1つ僕の怪魚コレクションを増やすことができました。
オオカミウオを持ち帰り、料理してみました。
オオカミウオの食べ方
さぁーお待たせしました! 皆さん気になるオオカミウオ料理についてレポートさせていただきます!
今回は、船中1匹目のオオカミウオを持ち帰ってきました。
北欧では、フィッシュ&チップスの材料としてオオカミウオは一般的で、揚げ物で食べられることは予想できますね。
オオカミウオの粘液は臭い
船長に『オオカミウオの粘液は臭いぞ!』と教わり、船上で散々デッキブラシで擦ってきたのですが……自宅に持ち帰るころにはピンク色の粘液が出ていました。
きゅうりの腐ったような(嗅いだこと無いケド)そんなテイストな匂いが一時的に部屋に充満しましたが、大量の塩で揉んであげると綺麗さっぱり落とすことができました。
オオカミウオのフルコース
せっかく自然からいただいた食材です。少しでも鮮度の良い状態で食べてみたく、眠い目を擦りながらオオカミウオを調理しました!
今回作って見たのはオオカミウオの味噌汁、刺身、フライ、塩焼き!
生・煮る・焼く・揚げるの基本中の基本で、オオカミウオを食レポいたします!
気になるオオカミウオのお味は?
オオカミウオのお味噌汁
オオカミウオのアラで出汁を取り、輪切りの身を入れてお味噌汁にしてみました。ヌメリの匂いが記憶に新しいですが、臭みは一切なし!
でも、これといって個性のある良い出汁が出ている訳でもなく、あっさりとした魚の味噌汁といった感じです。
オオカミウオの寄生虫にビビりながら刺身を食べる
北海道の魚といえば、何でもかんでもアニサキスが心配になってしまいますが、オオカミウオを捌いている間には1匹も確認できなかったので刺身で頂いてみました。
オオカミウオの刺身の味は、ほのかに甘く白身魚らしい美味しさがあるのですが、どことなく水っぽく感動する程の美味しさではありません。
オオカミウオの塩焼きは美味いぞ
香ばしい皮の香りと加熱したことによって適度に水分が抜け、身が締まり大変美味しいです!
ウツボのような強いコラーゲンは感じられず、どちらかといえば鯛やスズキといった一般的な白身魚に近しいですね!
オオカミウオのフライもまぁまぁ旨い!
最後はもっとも安心感のあるオオカミウオのフライです。
食感はタラに近いものの、タラ特有の香りや脂は無く、やや旨味に欠けますが、サッパリとしているので人によってはオオカミウオの方が食べやすいと感じるかもしれませんね。
感動はしないけど、“普通に美味しいわ!”って表現がぴったりな魚ですね!
日本の魚類層って本当に凄いな!って感じました
北国の怪魚“オオカミウオ”を求めた釣行記、いかがでしたか?
ベーリング海に生息するオオカミウオから、赤道直下に生息するテッポウウオまで、本当に日本の生物多様性って凄いなぁ。と改めて感じさせられる釣行となりました。
皆さんも、怪魚に限らず思い出に残るイッピキとの出会いを求めて魚釣りに出かけてみてはいかがでしょうか。
筆者紹介
山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活動中。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017