ベイトタックルを使ったシーバスフィッシング
一昔前まではシーバスフィッシングといえばスピニングタックルを使うのが当たり前でしたが、近年はロッドやリールの進化によってベイトタックルも選択肢に入るようになりました。
その結果、多くのメーカーがシーバス専用のベイトロッドやベイトリールを発売しています。
今回は、ベイトタックルの特性やロッドの選び方を解説し、おすすめのベイトロッドを紹介します。
ベイトタックルのメリット
ベイトタックルが普及した背景には、当然それゆえのメリットがあります。
まずはスピニングタックルと比較した際の長所を解説します。
キャスト精度が高い
ベイトタックルは構造上、キャスティングのコントロール性能が高いと言われます。
スピニングリールと違い、ベイトリールはキャスト時に直にライン(スプール)を触りやすく、サミングによってラインの放出量を細かく調整することが可能。
また、ベイトロッドはガイドがブランクス近いので捻れが起きにくく、リールの搭載位置もロッドに近いため、キャスト時のブレが少なくなります。
これによってピンスポットキャストがしやすく、ストラクチャーをタイトに攻められることが大きなメリットです。
スピニングタックルでも高精度なキャストは可能ですが、かなりの習熟が求められます。
巻き上げパワーが強い
ベイトリールはスピニングリールよりも巻き上げ力に優れています。
スピニングリールはハンドルの縦回転をローターの横回転に変換して巻き取りを行うため、どうしても駆動ロスが大きいのです。
それに対してベイトリールは、ハンドルの回転方向とスプールの回転方向が同じなので駆動ロスが極端に少ないことが特徴。
そのため、引き抵抗の大きなルアーを楽に巻けたり、大きな魚をウインチで寄せたりできます。
太糸と相性が良い
ベイトタックルは太糸を扱いやすく、糸が太くなるほどベイトタックルの方がよく飛んでトラブルも少なくなります。
キャスト時にベイトリールはラインが一直線に放出される一方で、スピニングリールは一気に螺旋状に放出されるのです。
それゆえに、ベイトタックルはラインがスムーズにガイドを通るのに対し、スピニングタックルはラインとガイド(とくに元ガイド)が激しく干渉します。
細い糸は干渉時の抵抗が少ないのでキャスティングへの影響は少ないのですが、太くなるほど抵抗が大きくなり、飛距離が落ちてライントラブルを起こしやすくなるのがスピニングタックルの弱点です。
飛行姿勢を整えやすい
S字系ビッグベイトや鉄板バイブレーションなどは飛行姿勢が安定しにくく、空中で失速しやすいルアーです。
このような飛行姿勢が不安定なルアーを飛ばすには、キャスト時(空中)に適度な抵抗を与え、飛行姿勢を安定させることが大切。
ベイトリールはサミングで抵抗を微調整できるので、空中でルアーの姿勢を自在にコントロールできます。
つまり、ルアーや風等の条件次第では、ベイトタックルの方が飛ぶこともあるんですね。
ビッグベイトを扱いやすい
近年は、ビッグベイトやジャイアントベイトが流行っています。
大型ルアーは自重が重たくて引き抵抗も強く、キャスト時のラインへの負荷も大きいので極太のラインが必要です。
巻き上げパワーや太糸への適性を考慮すると、圧倒的にベイトタックルの方が好相性。
ビッグベイトやジャイアントベイトは、“ベイトタックルありき”の釣りといえるでしょう。
ベイトタックルのデメリット
ベイトタックルを使うに当たっては、しっかりとデメリットを把握しておくことが大切です。
安易にベイトタックルを手に取って「失敗した……」とならないように、デメリットを解説します。
ライントラブルが起こりやすい
とくに慣れるまで、ベイトリールにはバックラッシュと飛ばれるトラブルが付き物です。
バックラッシュとは、ラインの放出をスプールの回転が上回り、過回転状態になった時にリール内部で糸が絡まるトラブル。
向かい風が強い時や軽いルアーを投げる時、ブレーキ設定が合っていない場合に起こりやすく、酷いケースだと解けなかったり、バックラッシュが原因で高切れしたりすることも。
解けたとしてもラインにダメージが残ることもあるので、バックラッシュをしないように練習をする必要があります。
ブレーキセッティングの難しさ
バックラッシュを防ぎ、飛距離を伸ばすには、ブレーキ調整が必要です。
より飛距離を伸ばそうとすると、ルアーチェンジ毎や風向き次第で細かく調整しなければなりません。
慣れるまではある程度投げ込み、ルアーとブレーキの相性などを体感で覚えていく必要があります。
飛距離が劣る
先ほど「ベイトタックルの方が飛ぶこともある」と紹介しましたが、全体で見ると飛距離はスピニングに軍配が上がります。
キャスト時のラインの抵抗が少ないスピニングに対し、ベイトタックルは抵抗が掛かり続けるので、特定の条件以外では不利です。
また、飛距離を伸ばそうとするとギリギリまでブレーキを緩める必要があるので、バックラッシュのリスクが高まります。
細糸を使いにくい
ベイトリールはスピニングリールに比べてドラグ性能が高くなく、細いPEラインやリーダーを使うのが難しいです。
また、細いPEラインはスプールの中で食い込みやすく、これが原因でキャスト時に高切れしたり、ファイト中にラインブレイクすることも。
細いPEラインを使うと、ベイトタックル特有のパワーや大型ルアーへの適性を活かせないため、「ベイトタックルで細い糸を使うメリットが少ない」ともいえます。
軽いルアーとの相性が悪い
ベイトタックルの特性を考慮すると、軽いルアーをベイトタックルで扱うメリットは少ないといえます。
軽いルアーを投げるには細糸で柔らかいロッドという選択になってしまい、そうなるとラインが食い込んで切れたり、ファイトに手こずったりと、デメリットの方が多くなるでしょう。
ルアーに応じたベイトロッドの選び方
シーバス用ルアーには、アンダー10gの小型のプラグから100g超のジャイアントベイトまで、いろんな種類のものがあります。
ロッドを選ぶ際には、使うルアーに合ったものを選ぶことが大切です。
ルアーの種類別に、ベイトロッドを3パターンに分けて解説します。
バーサタイルロッド
一般的によく使われるミノーやシンキングペンシル、バイブレーションなどには、ML〜Mクラスのベイトロッドが適しています。
適正ウエイトが10〜30gのロッドを選べば、オーソドックスなシーバスフィッシングが可能です。
大場所であれば8ft後半〜9ft前半、小場所であれば7ft〜8ft前半を目安に選んでください。
ビッグベイトロッド(1.5oz〜3oz程度)
ビッグベイトにはS字系やトップウォーター、ジャークベイトなど様々なものがありますが、1.5〜3oz(約40〜80g)のルアーをビッグベイトと定義することが多いです。
これぐらいのルアーには、対応ウエイトの上限が4〜5oz程度のロッドがマッチしています。
ビッグベイトはルアーが重いため、ロッドが長いと遠心力が強くなってバックラッシュや高切れを起こすため、バーサタイル系ロッドよりも短いことが特徴。
また、長いとキャスト時の身体への負荷が大きいので、7ft〜8ft前半ぐらいの長さを目安に選んでください。
ジャイアントベイトロッド
ビッグベイトと明確な線引きはされていませんが、全長20cmを越すとジャイアントベイトと呼ぶ場合が多く、有名なルアーだとメガドッグ220(メガバス)やジョインテッドクローマグナム(ガンクラフト)などが該当します。
重さも引き抵抗もビッグベイトとは桁違いなため、怪魚ロッドのような強靭なロッドが必要です。
そのため、上限が10〜12oz程度を目安に選びましょう。これぐらいのスペックであれば、大半のジャイアントベイトをキャストできます。
バスロッドの代用も可能
バスロッドはシーバスロッドと比べて短いものが多いですが、代用は十分可能です。
バスロッドはベイトロッドのラインナップが非常に多く、小型ルアーからビッグベイト・ジャイアントベイトに適したロッドが市場に数多くあります。
また、シーバス専用ベイトロッドは高価なものが多い(エントリーモデルにはベイトロッドが展開されていない)ため、スペックさえ合えばバスロッドを流用するのもおすすめです。
おすすめのバーサタイルロッド
ダイワ ラテオ 89MLB・R
幅広いシーバスアングラーに人気のラテオシリーズのベイトモデルです。
8ft9inのレングスは一見長いように感じますが、120gの軽さとシャープさを持ち合わせおり、非常に扱いやすい1本。
実売価格は2万円台前半ですが、ブランクスの捻れを防ぐための補強などもしっかり入っていてパワーも十分。
8ft9inのレングスがあるので、大規模河川の河口や干潟など、飛距離が求められる場所にはもってこいなロッドです。
シマノ ディアルーナ B86ML
オカッパリからウェーディングまで、あらゆるシーンを幅広くこなせるモデルです。
シマノらしいハリのある調子によって、ベイトタックルで大切なキャストアキュラシーと飛距離を両立しています。
穂先までしっかりと反発があるため、テイクバックを取りにくい小場所でもコンパクトなキャストができ、近距離・中距離の釣りにも最適。
10cm以下のプラグから鉄板バイブレーションまで扱える汎用性の高さは、ランガン派の味方です。
シマノ ルナミス B86ML
スパイラルXコアを採用したことで、ディアルーナよりも強度やパワーが上がったハイスペックな1本です。
キャスト時やファイト時のロッドのネジレや潰れがさらに少ないため、アングラーの入力をロスなくロッドへ伝えられます。
また、グリップはカーボンモノコック仕様なので、感度も抜群です。
感度やパワーを活かせる、流れの強い水道エリアや河川の上流域にイチオシです。
アピア グランデージ STD. C88M
適応ウエイトが5〜45gと広く、ビッグベイト以外のシーバス用プラグなら大半を扱えるオールマイティなロッドです。
マイワシパターンで使うロングビルミノーや、コノシロパターンで使う15cmクラスのウエイクベイトもロッドが負けずに巻いてこれます。
1番や2番クラスの太軸フックを使ってもしっかりとフッキングできるため、アベレージサイズが大きいエリアにはドンピシャの1本。
全体的に剛性感が強いので、リョウガやカルカッタコンクエストなどの丸型リールと相性抜群です。
アブガルシア ソルティーステージ プロトタイプ シーバス XSBC-842M
操作性・パワー・キャスタビリティなど、トータルバランス重視したハイコスパなモデル。
Mクラスのパワーやシャープさを備えていますが、魚の引きに応じて大きく曲がり込む調子に設計されています。
キャスト時にもルアーのウエイトをロッド全体に乗せやすいため、ベイト初心者の方でもキャストしやすいことも特徴です。
ミノーやシンキングペンシル、バイブレーションを使いやすいので、ベイトシーバス入門におすすめです。
ジークラフト セブンセンスSR モンスターストリーム MSB-902-SR
シーバス上級者から根強い人気を誇るジークラフトの中でも、比較的手に取りやすい価格帯のベイトロッドです。
9ftのロングレングスは小場所でやや取り回しに欠けますが、河川では抜群の操作性を誇ります。
9ftながら自重はわずか158gなので、激流の中でのラインメンディングをしやすく、意外と繊細な釣りとも好相性。
秋の落ち鮎シーズンや晩秋のコノシロシーズンにもベストマッチな1本です。
シマノ ワールドシャウラ 1832R-2
シマノが誇る最高峰ルアーロッドのワールドシャウラシリーズ。その中の1832R-2がベイトシーバスにピッタリです。
ワールドシャウラはシーバスロッドではなく、国内外のあらゆる魚を対象としたマルチロッドであるがゆえに、非常にハイレベルな汎用性を備えています。
遠投性能がウリのロッドですが、グリップがストレートなのでリールに近い位置を引き手で握れるため、テクニカルなキャストも可能です。
非常に高価ですが、小場所から大場所まで1本で狙っていくには格別に良いロッドです。
メガバス 空海 CK-810MC
ミディアムクラスながらアンダー10gの軽量プラグへの適性が高く、その一方でMAX40gまでキャストできるバーサタイルなモデル。
ティップはミディアムクラスの割に柔らかく、ベリーからバットへの負荷の移行がスムーズに行えることが、幅広いウエイトを扱える理由です。
30〜40m程度のキャストでテンポ良くピンスポットを撃ち抜いていく釣りにも、大場所での遠投にも、文句なしの使用感。
また、グリップ周りのコスメにはメガバスらしい高級感が溢れており、アングラーの心もがっちり掴んでくれます。
ツララ ハーモニクス コローナ 89MSC-HX
手に取った瞬間に「ガイド多くて小さい」と驚くはずです。なんと、一般的なロッドの2倍近い数のガイドが付いています。
ガイドの径を小さくし、ガイドの間隔を狭くすることで、キャスト時のラインのブレを極限まで小さくしていることが特徴。その結果、飛距離やトラブルレス性能の向上に繋がっています。
高価ですが、長さや対応ウエイトなどもシーバスゲームのど真ん中で、価格以上の満足感が得られるはずです。
おすすめのビッグベイト・ジャイアントベイトロッド
シマノ ルナミス B76MH
1.5〜2oz程度のビッグベイトやビッグペンシルベイトにおすすめのモデルです。
短いものが多いビッグベイト系ロッドの中でも、7ft6inのレングスがあるので重量級ルアーを使って大場所を攻略するのにおすすめの1本です。
シマノらしい張り感があり、ペンシルベイトやジャークベイトをクイックに動かせるため、デイゲームでのリアクション要素の高い釣りとも好相性。
ダイワ ブラックレーベルLG 6111H+FB-SB
バスロッドですが、シーバスのビッグベイティングにもイチオシのロッドです。ビッグベイトロッドながら柔らかいティップを備えた独特の調子が特徴。
ティップまで硬いロッドとは違い、ティップだけを見るとMかMHクラスかと思えますが、ベリーからバットにかけては非常に強いファストテーパーアクション。
ティップが入ることで、微かな水流の変化や潮目の壁などを捉えやすく、ルアーの動きも伝わります。
5ozまでのビッグベイト・ジャイアントベイトを使う釣りにおすすめです。
アブガルシア ソルティステージ プロトタイプ シーバス XSBC-742X-BB
ビッグベイト・ジャイアントベイト専用のハイコスパなモデル。グリップにラバーが巻かれており、重いルアーをキャストする際の握り込みのズレを防止します。
ファイト時やリーリング時にも手の腹がラバーに当たるため、リーリングのブレを抑えて力強い巻き上げが可能です。
また、レギュラーファストテーパー寄りの7ft4inのブランクスは、小場所でのショートキャストもしっかり行えます。
MAX140gまでキャストできるうえ、ティップも程よく入るので、流行りのジャイアントペンシル(メガドッグ220やザブラペンシルコノハ)も軽快にドッグウォークさせられます。
アピア グランデージ STD. C80H
80gまでのウエイトを扱えるビッグベイト用ロッドです。275gの重量級ロッドですが、バランスが良いので持つと自重よりは軽く感じるはずです。
パワーも十分あり、ランカークラスが多い大型河川から小規模河川まで幅広い場所で使えます。
ラインブレイクのリスクが高い杭や橋脚、牡蠣瀬の周りでも長さとパワーを活かして魚をコントロールできます。
フィッシュマン ブリスト コモド 7.5H
しなやかなティップを持った個性的なビッグベイトロッドです。対応ウエイトは30〜120gで、ビッグベイトロッドながら中量級ルアーも使えます。
一般的なビッグベイトロッドで中量級ルアーを投げると、キャストアキュラシーや飛距離が不十分なことが多いのですが、コモド7.5Hはしなやかなティップによって高い次元で対応。
また、仕舞寸法が85.5cmと非常にコンパクトなので、都市部のランガンや電車釣行にも良く、落ち鮎のシーズンには山を超えて清流シーバスを狙うのにも邪魔になりません。
シマノ ワールドシャウラ 1785RS−2
MAX140gまで対応する、ワールドシャウラの中でもパワフルな1本。
レギュラースロー寄りに設計されたテーパーは、しっかりとウエイトをベリー・バットへ乗せられるのでキャストがしやすく、遠投性能も抜群です。
シーバスで使用頻度の高い2〜3oz程度のビッグベイトから、5ozクラスのジャイアントベイトまで扱えます。
落ち鮎やコノシロパターンで大きなルアーが必要な場合にはドンピシャの1本です。
メガバス メガバス 空海 CK-710EXHC
MAX150gのビッグベイト・ジャイアントベイトをカバーするロッドです。
穂先は柔らかめなので、ビッグベイトのみならず大型のウエイクベイトやミノーなども扱いやすく、スペックからは想像できない汎用性を備えています。
繊細な操作ができるので、ジョイントプラグやジャークベイト、ペンシルベイトなどのロッドワークが多い釣りとも好相性。
ビッグベイトロッドにありがちな大味さは一切無く、大型ルアーを丁寧に扱える1本です。
スピニングとベイトの使い分けが肝心!
ベイトロッドだけでシーバスフィッシングが可能かというと、そうではなく、ベイトだけではアジャストできない状況も多々あります。
ベイトにはベイトの良さ、スピニングにはスピニングの良さがあるので、それぞれの特性を理解したうえで、釣り方に合ったタックルを選んでみてくださいね。