ナンヨウチヌの特徴や見分け方
ナンヨウチヌ(Acanthopagrus berda)とは
ナンヨウチヌは、スズキ目スズキ亜目タイ科ヘダイ亜科クロダイ属に分類される言わずもがなクロダイの仲間です。
ちなみに、チヌという言葉がクロダイを示すことは釣り人ならば広く知られたことですね。
チヌの語源は、茅渟海(ちぬのうみ:現在の大阪湾)でよく捕れたことに由来すると言われています。
クロダイの仲間って何種類いるのか?
Acanthopagrus 属に分類されるクロダイの仲間は世界に約20種類が知られており、その内5種類が日本に生息しています。
日本に生息するクロダイの仲間5種類は、クロダイ、キチヌ(キビレ)、ミナミクロダイ、ナンヨウチヌ、オキナワキチヌです。
ヘダイもクロダイに近い種類ではありますが、ヘダイ属(Rhabdosargus)に分類されています。
ナンヨウチヌの特徴は体高の高さ
堅苦しい細かな見分け方は後述するとして、パッと見て感じるナンヨウチヌの特徴は何といっても背中の高さでしょう。
特に40cmを超えてくるとこの特徴が顕著に現れ、他のクロダイの仲間との見分けは比較的簡単です。
また、吻(ふん:口先)が尖らず丸みを帯びた顔つきや、全てのヒレが黒いこともナンヨウチヌの特徴と言えるでしょう。
ナンヨウチヌの科学的な見分け方
分類学的に明瞭な見分け方としては、背鰭棘条部中央下側線上方横列鱗数が3.5枚と言うことでしょう。
早口言葉というより、そもそも漢字すら読めませんよね……w
簡単に言えば、背びれと側線(そくせん:体側にある点)の間のウロコの数を表しています。
ちなみに、クロダイ:6.5枚、キチヌ:3.5枚、ミナミクロダイ:4.5枚、オキナワキチヌ:4.5枚となります。
ナンヨウチヌの広い生息域と生態について
南の海に生息するナンヨウチヌ
ナンヨウチヌの生息域は、“台湾や海南島、香港からオーストラリア北部にかけて”とされており、赤道付近を中心に南北にとても広いことが特徴です。
オーストラリアでは、ナンヨウチヌをはじめ複数種のクロダイの仲間が生息しており、日本同様に魚釣りの対象種として人気があります。
言うまでもなく、東南アジア諸国では食用魚として漁獲されています。
ナンヨウチヌは日本にも生息しています
熱帯性の魚とも言えるナンヨウチヌですが、日本にも西表島を中心に石垣島など八重山諸島の一部で生息が確認されています。
日本という国は北から南まで本当に長い国なんだなと実感しますね。
クロダイの仲間は雌雄が変化します
ナンヨウチヌの面白い生態として、成長が進むにつれてオスからメスに性転換(雄性先熟)することが知られています。
これは、クロダイの仲間に見られる生態で、5歳以上のクロダイのメスの割合は7~9割と言われています。
ちなみに、コブダイを始めとするベラの仲間やハタの仲間はメスからオスへ性転換(雌性先熟)します。
ナンヨウチヌが好む環境や餌について
ナンヨウチヌは河口域を好む
ナンヨウチヌの生息環境は、砂や岩礁帯の浅い沿岸域から汽水および一部の淡水域と言われています。
特にマングローブ帯に多く生息し、西表島ではマングローブフィッシングの主要なターゲットになっています。
ナンヨウチヌは時に淡水域にも現れます
堰やダムがほとんどない西表島では、魚の意識と遡上能力次第で純淡水域まで川をのぼることができます。
塩分が変化しないような淡水域でも、しばしばナンヨウチヌが豪快にルアーへアタックしてくることもあるんです!
特に、15cm前後の小さなナンヨウチヌの遡上意識の高さには驚かされます。「えッこんなところに?」って湿原で姿が見れたりします。
ナンヨウチヌのメインベイトは……
クロダイと同様に、ナンヨウチヌも非常に幅広い雑食性を示すと思われます。
その場、その時期に最も食べやすい餌を食べていると考えるのが一般的でしょう。
マングローブ林の中は生き物の宝庫で、大小様々な甲殻類や貝類、魚などを選り好みせず捕食していると思われます。
僕が釣りあげたナンヨウチヌからは沢山の中型のエビが出てきました。
ナンヨウチヌに効果的なルアーは?
ナンヨウチヌはルアーに好反応を示してくれる
西表島でマングローブフィッシングを楽しんでいると、一番遊んでくれる魚と言っても良いのがナンヨウチヌです。
とにかく好奇心旺盛で貪欲なナンヨウチヌは、水面の音に敏感に反応し様子を伺いにきます。
他の魚が捕食していると勘違いするのでしょう。
ナンヨウチヌにはポッパーが一番!
そんなナンヨウチヌをエキサイティングに釣るには、5-7cm程度のポッパーが最適です。
短めのポーズを取りながら、ポコッポコッとアクションさせてあげると「ガボォッ!!」っとド派手に空気と一緒にルアーを吸い込んでくれますよ!
水面が静寂な時はペンシルベイトも◎
上げ潮で水面が静かな時は、ペンシルベイトに連発する時があります。
ポッパーが苦手な方はペンシルベイトでも大丈夫です。
飛距離も動きも安定しているメガバス・コアユがオススメです。
手堅く小さなナンヨウチヌを狙うなら……
とにかくサイズに拘らず手堅くナンヨウチヌに出会いたいという方は、ぜひ3g前後のスピナーを使ってみてください。
ナンヨウチヌに限らず、さまざまな魚を引っ張ってきてくれるスピナーは遠征には欠かせないルアーです。
竿は短く、糸は強く、針はほんのちょっと細めに
最後にタックルについてご紹介させていただきます。
マングローブでの釣りは、根掛かりがつきものです。
また、45cmを超え、体高がグンっと張り出したナンヨウチヌは想像以上によく引きます。
確実に根掛かりからルアーを回収できるように、魚にルアーを残さないように、タックルは意識的に強いものを選び、フックが一番弱くなるようにバランスを取りたいところです。
ロッドは5.5~6ft程度の短いトラウトもしくはバスロッド、ラインはPE1.5~2号、リーダーは20~35lbを30~50cmと短めにすると良いでしょう。
筆者紹介
山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。
餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活躍する。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017