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テッポウウオ

西表島にだけ生息する『テッポウウオ』。海を渡ってやってきた幻の熱帯魚に釣り出会う!

『テッポウウオ』といえば観賞魚として人気の高い魚。日本では西表島のみに生息し、実はマングローブフィッシングで出会える魚のひとつなんです。今回はそんなテッポウウオの生態や特徴、釣りについてご紹介します!

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目次

西表島は生き物の宝庫だ

川の多い西表島について

西表島

西表島(いりおもてじま)は沖縄県八重山郡竹富町に位置する周囲130km、面積289.61㎢の島で、その大きさは沖縄県においては本島についで2番目の大きさを誇ります。

東京から約2100km、台湾から約200kmと表現するといかに日本の西端にあるかということがお分かりいただけるかと思います。

そんな西表島は、平地が少なく山の多い地形が特徴。浦内川や仲間川など豊富な内水面を有しており、中でも浦内川は沖縄県で最も長い川(総延長18.8km)として知られています。

水没を免れた亜熱帯の自然林

西表島 マングローブ

西表島の年間平均気温は23度と温かく、平均湿度はなんと80%。気候としては熱帯に近い亜熱帯海洋性気候とされています。

標高の高い西表島は、過去の温暖化によって海面が上昇した海進期にも水没しなかったため、生き物たちは西表島で独自の進化を成し遂げてきたと考えられており、イリオモテヤマネコやショキタテナガエビなど固有種も生息しています。

日本でテッポウウオが唯一生息する島

テッポウウオ

おっと……今回の主人公は『テッポウウオ』でしたね。

あまりに西表島が好きすぎて危うく、西表島の魅力を紹介する記事になってしまうとこでした。笑

西表特集はまたの機会とさせていただき、水を使って虫を落とすと言われる熱帯魚『テッポウウオ』に迫っていきますよ!

テッポウウオの種類や生態について解説

テッポウウオの名前の由来

テッポウウオ 口

テッポウウオは、スズキ目テッポウウオ科テッポウウオ属に分類される魚の総称でもあり、その名の通り「口から水を発射し昆虫などの小動物を打ち落とし捕食する」非常にユニークな生態を持つ魚です。

英語や中国語もこの生態に由来を持ち、Archerfish(アーチャー・射手)や弓箭鱼(ゴンジエン・きゅうせん)と呼ばれます。

テッポウウオは汽水魚

テッポウウオ 生息域

一部の種類を除き、テッポウウオは川の水と海の水が混じり合う汽水域に生息し、時に川を昇ったり海に出たりすることが知られています。

繁殖生態については謎の多い魚で、汽水域で産卵していると考えられています。

南の国で汽水と言えばマングローブですよね。西表島でもマングローブ帯にテッポウウオは生息しています。

テッポウウオの種類

スモールスケールアーチャー テッポウウオ

おもに、東南アジアからオーストラリアにかけて広く生息するテッポウウオ科に分類される魚は、全部で1属9種類が知られています。

標準和名(種の学名と一対一となる名前)で示すテッポウウオとは、西表島に生息している Toxotes jaculatrix になり、最も大きな生息範囲(インド東部からソロモン諸島)を持つ種類です。

学名 生息域・特徴
バンデッドアーチャー Toxotes jaculatrix 西表島に生息する種類。大きなバンド状の模様と広い生息範囲が特徴。
セブンスポットアーチャー Toxotes chatareus 40cm前後まで成長する最大種。ニューギニアからインドにかけて生息。
スモールスケールアーチャー Toxotes microlepis タイやマレーシアなどに生息。2018年さらに3つの種類に分けられた。
ゼブラアーチャー Toxotes blythii ランダムに乱れた模様が特徴。ミャンマーに生息する。
プリミティブアーチャー Toxotes lorentzi 模様が極端に薄いのが特徴。オーストラリア北部からニューギニアなどに生息。
ウエスタンアーチャー Toxotes oligolepis フィリピンやインドネシアの一部の島にのみ生息する非常に珍しい種類。
キンバリーアーチャー Toxotes kimberleyensis  2004年にオーストラリアキンバリー地区で発見された新種。

7種類共に、体の形に大きな差は無く、模様や生息域が異なります。

西表島に生息するテッポウウオについて

ルアーで釣った テッポウウオ

西表島に生息するテッポウウオは、バンデッドアーチャー(縞模様のテッポウウオ)という名の通り、特徴的な太いバンド模様を持つ魚です。

テッポウウオの仲間では最も生息範囲が広く、インド洋東部から西太平洋の熱帯域にかけて生息し、西表島は本種の北限生息域とされています。

バンデッドアーチャーの平均的な大きさは20cm前後、最大で30cm程度まで成長します。

テッポウウオはあんまり水を発射しない?

食パン テッポウウオ 釣り

常日頃から水鉄砲を発射しまくると勘違いされがちなテッポウウオですが、実は条件が揃わなければなかなか水を噴射しません。

テッポウウオの食性はとても広く、昆虫類が大好物であるのはもちろんのこと、口に入る大きさであれば小魚や甲殻類も食べます。

ところによっては、食パンで釣ることもできるくらい何でも食べるテッポウウオですが、昆虫以外は水を噴射する必要がありませんよね。

テッポウウオが水を噴射するのは、昆虫など水上にいる獲物を狙う時だけで、そのようなシチュエーションは意外と少ないんです。

西表島のテッポウウオのルーツを考える

昔から西表島にテッポウウオがいた訳じゃない

西表島でテッポウウオが初めて目撃されたのは1980年、初めて標本として保存されたのは1986年のことです。

今でこそ西表島の一部の河川に定着しているテッポウウオですが、実はもともと西表島には生息していません。

テッポウウオって外来種なの?

テッポウウオ 水中

西表島において、テッポウウオは外来種として扱われていません。

海水にも進出することのあるテッポウウオは、生息域であるフィリピンなどから西表島に自然の力でたどり着いたと現状では考えられています。

西表島では、テッポウウオの他にもウラウチフエダイやバラマンディなどが、海と川を行き来する熱帯性の魚が目撃されており、今後これらの魚も定着するかもしれませんね。

人間が介入しない、自然な生息域の変化。日本にもダイナミックな自然の営みを感じることのできる場所がまだ残されています。

環境省のレッドデータブックによる評価

テッポウウオ

テッポウウオは、環境省および沖縄県双方のレッドデータブックにおいて絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種)と評価されています。

現在のところ、大規模な保護対策や生態調査は行われていませんが、西表島が位置する竹富町ではテッポウウオは希少野生動植物に指定されています。

テッポウウオが釣れた場合は速やかにリリースしましょう

テッポウウオ リリース

「遊漁による釣獲圧が高まっており、鑑賞を目的とした採捕による影響も危惧されている」
改訂レッドリスト 付属説明資料汽水・淡水魚類 平成 22 年3月 環境省自然環境局野生生物課

ご覧のような文章も見られるように、テッポウウオに関しては釣り人の行動も注視されています。

西表島でマングローブフィッシングを楽しみながら“テッポウウオだけを避ける”ことはできません。

このような状況を鑑みて、テッポウウオが釣れた場合は水辺で記念写真を撮る程度に留め、できる限り水から魚体を上げずに速やかにリリースしましょう。

今後も西表島のマングローブで今まで通り魚釣りを楽しむために、どれが希少な生き物なのか、なにが議論されているのか、釣り人も積極的に勉強すべきでしょう。

テッポウウオが住む西表のマングローブで楽しむ魚釣り

西表島で楽しむマングローブフィッシング

西表島を流れる川では、マングローブジャックやナンヨウチヌを狙ったルアーフィッシングが楽しめます。

手軽に陸っぱりで楽しむも良し、カヤックをレンタルしてガッツリ釣るも良しです。

ポッパーが一番楽しい!

ナンヨウチヌ

マングローブフィッシングといえばトップウォーターゲームでしょう!

西表島では、とにかく色んな魚達が水面を割ってルアーに飛びかかってきます。

マングローブでは特にポッパーがオススメ。「ポコッ…ポコッ…ガボォッ!」テンション爆上がりです。

喰い渋った時に備えてミノーやスピナーを用意しよう

水面への反応が悪い時はぜひ、スピナーやシンキングミノーを試してみてください。

スピナーではテッポウウオのような思わぬ珍魚が釣れたり、小さなシンキングミノーではハタの仲間やメッキが掛かってきますよ!

筆者紹介

テッポウウオ 釣り

山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。
餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活躍する。

怪魚ハンター山根ブラザーズ(兄)の記事一覧

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