サーモン(鮭)にはさまざまな種類がいます
サーモンとトラウトの差は“海”に下るかどうか?
単刀直入に申し上げましょう。鮭(サーモン)と鱒(トラウト)の間に分類学上の差はありません。
とはいえ、サケとマスを呼び分けるのは諸外国でも同様で、和名よりも英名の方が的確に区別しています。
和名にはこれといった規則性はありませんが、英語では、海に下るもの(キングサーモンやチャムサーモン)をサケと呼び、河川に残るもの(レインボートラウトやレイクトラウト)をマスと呼びます。
食材としてサーモン(鮭)の種類を見分けてみよう
ひとえにサーモンといっても、サケ目に分類される鮭の仲間は、世界に11属66種が知られています。
そんな中で世界で食品として一般的に流通しているサーモンは、7種類といわれています。
皆さんは何種類思い当たるでしょうか?
天然サーモン漁獲量TOP3
■天然漁獲量
- 1位:カラフトマス
- 2位:シロザケ
- 3位:ベニザケ
世界の天然のサケマス類の漁獲量は、年間80~100万トン前後で横ばい状態が続いています。
サケマスの主な漁場は、ノルウェーやロシア、アメリカ、カナダを始めとする先進国周辺であるため、資源管理が徹底されているんですね。
養殖生産量TOP3
■養殖生産量
- 1位:アトランティックサーモン
- 2位:トラウトサーモン
- 3位:ギンザケ
世界的にサケマス類の養殖生産量は増加傾向にあり、今では年間300万トンを超えるといわれています。サーモン需要の高まりは、世界だけではなく我が国日本でも顕著です。
鮮魚売り場や回転ずしのメニューからも日本でのサーモン人気を感じることができますね。
しかしながら、刺身用サーモンとなると種類を分けて食べている方は少ないのでしょうか。
知ってるサーモンの名前はありましたか?
近年では、日本人が『一番よく食べる魚』はサケマス類、『最も好きな魚』はマグロとサケマス類の2強時代なんて言われます。
日本人もサーモンの美味しさや優れた栄養面に気づき始めた令和の時代。サーモン需要はますます増えることでしょう。
今回は、スーパーで実際に販売されているサーモン達の種類やオススメな食べ方を釣り方も交えながらご紹介します。
釣りの対象魚にもなりうる天然サーモン
安くて沢山獲れる:カラフトマス
カラフトマスは北太平洋に生息し、最も天然資源の多いサケマス類とされています。
日本で漁獲量が増えるのは、産卵のため接岸し始める6月から8月にかけて。
この時に鮮魚として安価で流通しますが、他のサーモンより味が劣り、脂の乗りも悪いのが正直なところで、主に缶詰などの加工品になります。
また、カラフトマスの卵は鱒子(マス子)と呼ばれ、シロザケのイクラの半値程度で取引されます。
カラフトマスの釣れるシーズン
二次性徴が進んだカラフトマスは背中がせっぱり、とてもカッコ良い体形になります。
日本では北海道で8月から9月にかけて狙って釣ることができます。
ピンク色のスプーンやタコベイトを使って遡上を意識したカラフトマスを狙ってみましょう。
サケと言えばこの魚:シロザケ
北太平洋と北極海の一部地域に生息するシロザケ(標準和名:サケ)は、日本人にとって一番なじみ深いサーモンと言えるでしょう。
鮮魚として出回るのは初夏から秋にかけて。初夏のものは「時鮭」と呼ばれ、味が良く漁獲量も少ないこともあり比較的高値で取引されます。
秋にスーパーに出回る秋鮭は漁獲量が増えることに加え、産卵に向けて味も劣るようになるため安価で買いやすくなります。
シロザケはヘルシーだが栄養面で劣る
シロザケのカロリーは他の養殖サーモンの半分程度といわれており、栄養面では養殖のサーモンの方が優れています。
そんなシロザケですが、シロザケならではの味わいがあり、やっぱり秋になるとスーパーで生の秋鮭を買ってしまいます。
旬の秋鮭をバター焼きやちゃんちゃん焼きにするのが楽しみです。
日本でも楽しめるサーモンフィッシング
日本で釣ることのできるサケマス類の中では、イトウに次いで大きく成長するシロザケ。サケ釣りの魅力は何といっても強い引きでしょう。
資源量調査に参加する形で川に遡上したシロザケを狙う場合は、サーモン専用ロッドや強めのシーバスロッドを用意し、ピンク色のスプーンやタコベイトを使って狙います。
海ではフロートを使った独特な仕掛けに餌とスプーンを合わせて使うのが効果的です。
▼サケ釣りのルールをしっかり確認!
最も味の良いサーモン:ベニザケ
ベニザケは北緯40度以北の北太平洋や北極海に生息しており、日本では択捉島を除き降海型のベニザケは自然分布していません。
動物プランクトンを好んで食べるベニザケの身は、抗酸化作用のあるアスタキサンチンを豊富に含み、サーモンの仲間で断トツに赤いのが特徴です。
“サーモンの聖地”カナダ・バンクーバーでは最も美味しいサケと言われ、現地で食べるソッカイサーモン(ベニザケ)のステーキやルイベ、スモークは格別に旨いんです。
生ではありませんが、ベニザケは塩鮭としてスーパーの定番商品ですね。ギンザケやシロザケよりも値段は高いベニザケですが、赤みが強く、味の深みがあり大変美味しいサケです。
ベニザケ=ヒメマス
ベニザケの陸封型はヒメマスと呼ばれ、北海道の阿寒湖とチミケップ湖に自然分布し、秋田県・十和田湖や山梨県・西湖など各地に放流されています。
お手軽なサビキ釣りから、レイクトローリング、岸からのルアーやフライフィッシングと狙い方は様々です。
▼十和田湖で真っ赤に染まるヒメマスを狙った釣行記
栄養価の高いサーモンが食べたければ養殖物を選ぼう!
最も脂の乗りが良いサーモン:アトランティックサーモン
タイヘイヨウサケという標準和名が示すとおり、北大西洋北部に生息するため日本では漁獲されません。
ノルウェーやチリなどで大規模に養殖生産され、主に生食用として日本に輸出されています。
16%前後ともいわれる脂の量は、口にするとまるでトロ! ほんのり甘くすっと溶ける感覚が人気の秘訣です。
「このサーモン美味しい!」と感じるのはアトランティックサーモンと考えて良いでしょう。
安定感が一番の凄さ:トラウトサーモン
少し怪しげな名前もあって、聞き覚えのある方も多いサーモンでしょう。もちろん、生食用に生産されているため、安心して食べることができます。
トラウトサーモンとは、品種改良されたニジマスを意味します。主な産地はチリとノルウェーですが、チリ産は開発段階で日本の企業が関わっているため、日本人好みの触感や脂の質だと言われています。ノルウェー産は脂の乗りが強いのが特徴です。
アトランティックサーモンよりも安価で、近年、トラウトサーモンを取り扱わないスーパーや回転寿司は殆どないと言えるでしょう。
実は管理釣り場でも狙えるトラウトサーモン
近年のサーモン人気もあり、日本国内では高級志向のニジマスの品種改良が盛んに行われています。
長野県の信州サーモンや山梨の富士の介といった1kgあたり2,000~4,000円もする高級ニジマスが販売されています。
そんな高級な刺身用トラウトを放流している管理釣り場も増えてきています。
高級ニジマスを狙った管理釣り場釣行も良いかもしれませんね!
僕のオススメは、ニジマスとブラウントラウトを掛け合わせた信州サーモンです。
幅広いレシピに対応するサーモン:ギンザケ
ギンザケは千島列島以北の北太平洋北部に生息し、日本の河川には遡上しないサーモンです。
シロザケよりも脂が多くふっくらとした身質のギンザケは、焼いても硬くなりにくく、生食用にも養殖されているためお刺身でも食べる事ができます。
国産の高級品からチリ産のリーズナブルなものまで選択肢の幅が広いのも特徴です。
塩鮭として売られている鮭は、ギンザケ、シロザケ、ベニザケの3種類が主流ですが養殖物のギンザケは、安くて脂がたっぷり乗っているため人気です。
ランキング外となったキングサーモンについて
サケマス類の王様:キングサーモン
サケマス類の中では最大級に大きくなるキングサーモンは、一般的に流通するサーモンの7種類目にあたります。
大変食味が良いことが知られていますが、養殖難易度が高く、天然資源も他のサケマス類と比べると少ないため、流通量が世界的に少ないのが現状です。
滅多に生のキングサーモンは出回りませんが、もし見かけたら是非食べてみて欲しいサーモンです。
キングサーモンは、天然物とは思えぬほど脂がたっぷり乗るため、アメリカやカナダではステーキなど焼き物がオススメと言われます。
僕の個人的な感想になってしまいますが、ミシガン湖で釣ったキングサーモンのルイベは、さっぱりとした脂に大変驚きました。
脂が強く口に入れるとスっととろけていくのですが、養殖ならではの舌に残る脂っこさが無いのです。
天然ならではのサッパリとした脂の溶け具合。今、思い返してももう一度食べたくなります。
釣りの対象魚として人気なキングサーモン
50kg前後にまで成長するキングサーモンの引きは強烈です。多くのトラウトファンの憧れの魚と言えるでしょう。
カナダのバンクーバーや南米のパタゴニア、アラスカなどがキングサーモンフィッシングのメッカになっています。
▼キングサーモンについてはコチラの記事で詳しくご紹介
サーモンの美味しさランキングTOP3(山根私心)
■美味しいサーモンランキング
- 1位:ベニザケ
- 2位:キングサーモン
- 3位:アトランティックサーモン
お刺身や焼き物、塩漬けや燻製など様々な食べ方ができるサーモンの美味しさに順位をつけるのは難しいことですが、あえて大きな主観のもとに僕なりにランクを付けてみるとこんな感じ。
皆さんも色んなサーモンを食べ比べてお気に入りを探してみてはいかがでしょうか。
筆者紹介
山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。
餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活躍する。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017