ややこしい標準和名を与えられた魚「ドンコ」
ドンコと名乗る魚が他にもいる件について
皆さんにとって“ドンコ”という名前の魚はどんな魚でしょうか?
これは、北と西で大きく意見が対立する話なんです。
マックとマクドくらい根深い対立かもしれません。
北海道・東北地方の海に生息する「ドンコ」
北海道から福島県にかけて多く生息し、東海・関西地方でも偶に見かける“チゴタラ”は、タラ目チゴタラ科チゴタラ属に分類されるタラの仲間です。
食味の良さと資源量の豊富さから庶民に人気の食材であり、北海道や東北地方では「鈍子 =ドンコ」と呼ばれます。
ちなみに、エゾイソアイナメと言う名前で呼ばれることもありますが、2019年にエゾイソアイナメとチゴタラは同一種であったという結果を示す論文が発表され、標準和名からエゾイソアイナメは削除されています。
つまり、違う種類と思ってた2種類の魚が実は一緒だったという話ですね。
▼チゴタラの釣り方はコチラの記事でご紹介
話を正真正銘のドンコに戻しましょう
危うく、チゴタラの記事になってしまいそうな勢いでしたね(笑)。
“ドンコ”という標準和名(種の学名と一対一となる名前)は、川魚のドンコを意味します。
今回の件は西に軍配が上がったところで、川に生息するハゼの仲間“ドンコ”について深堀していきたいと思います。
ドンコは一生を淡水で過ごすハゼの仲間
ドンコの生息域
ドンコ(Odontobutis obscura)は、スズキ目ハゼ亜目ドンコ科ドンコ属に分類されるハゼの仲間で、最大25cm前後まで成長します。
愛知県及び新潟県より西に広く生息し、近年では関東地方でも国内外来種として局所的に生息が確認され問題視されています。
流れが緩やかで底質が砂礫状の環境であれば、河川湖沼問わず生息し田んぼの用水路などにも姿を現します。
※ハゼ亜目をハゼ目と意見もあります。
カワアナゴと間違えられることも
ドンコと同様に大型のハゼの仲間であるカワアナゴと姿が似ていることから、たびたび見間違えられます。
ドンコは大きく潰れたような頭をしており分厚い唇なのに対し、カワアナゴは尖ったような顔つきをしているため、慣れれば見分けることは容易です。
ハゼの仲間はほとんど海水魚
川に生息するマハゼやカワアナゴ、ホシマダラハゼやタナゴモドキでさえも繁殖の為に海水を必要とします。
釣りの対象とはならないためあまりピンと来ないかもしれませんが、ほとんどのハゼの仲間は一生を海で過ごす海水魚であり、マハゼのように河川に侵入する種類は少数派です。
ましてや、ドンコのように一生を淡水で過ごすハゼは、ハゼの仲間ではレアケースです。
ドンコは一生を淡水で暮らす珍しいハゼの仲間
海と川を行き来するカワアナゴやマハゼと違い、ドンコは一生淡水域で過ごすため行動圏が狭いのが特徴です。
ドンコの繁殖期は4月から7月にかけて、倒木や石の下に巣穴を掘って産卵します。
産卵後、オスがふ化するまで卵を守り、生まれた稚魚はハゼの仲間では珍しく浮遊生活は行わず、すぐに底生生活を始めます。
獰猛なフィッシュイーター「ドンコ」を釣ってみよう
ドンコの食性|生きた餌を好んで食べる
ドンコは、小魚はもちろん、エビや水生昆虫、流れてきたミミズなどとにかく動く物にはなんでも襲い掛かります。
非常に貪欲で、口に入りさえすれば丸呑みにしてしまいます。
このドンコはヤリタナゴを捕まえたようで、15分もかけてゆっくり丸呑みにしていました。
この貪欲な肉食性から、本来ドンコが生息していない関東以北では国内外来種としてドンコによる食害が懸念されています。
ドンコ(川魚)は狙って釣れる魚です
『ドンコ 釣り』と検索するとチゴタラ(エゾイソアイナメ)が多勢を占めます。
釣りという目線で「ドンコ」というとチゴタラに軍配があがったようですね。
とはいえ、川に住む本家本元のドンコも狙って釣れる釣りものなんですよ。
ドンコは見釣り(サイトフィッシング)がオススメ
川底でじっとしていることの多いドンコは、ブラックバスのように積極的にルアーを追いかけることもなければ、コイのように匂いで寄ってくることもあまりありません。
ドンコを釣るなら、まずは自分の目でドンコを探しましょう!
水深は15cm前後、川底が砂礫(砂や小石)で緩やかに流れる小川や用水路なんかが狙い目ですよ。
まずはドンコを見つけよう
ドンコは、アユカケのような極端な石化け(いしばけ)はしませんが、体色が砂礫に似ているので慣れるまでは見つけるのに苦戦するかもしれません。
案外、大人よりもちびっこの方が沢山見つけたりするもんです。頭を柔らかくして川底に潜むドンコを探してみてください。
流れのある場所で入水してドンコを探す場合は、ドンコに警戒心を与えたり濁りの影響を受けないように下流から上流に向かって探しましょう。
▼アユカケの石化けはコチラの記事でご紹介!
ドンコを見つけられれば簡単!鼻っ面に餌を落とすだけ!ワームでもOK
ドンコを釣る仕掛けはシンプルで構いません。
例えば、メバルを釣るような2g前後のジグヘッドでも良いですし、釣り針とガン玉(オモリ)でシンプルに作っても良いでしょう。
餌は活きの良いミミズが一番ですが、サンマの切り身やガルプなどのワームでも大丈夫です。
ドンコの鼻っ面でチョンチョンと動かして誘ってみましょう。きっと「バクっ!」と食いついてきますよ!
ドンコの飼育方法 水槽の大きさと混泳、人工飼料や水温について
ドンコの飼育は比較的簡単ですが、飼うなら死ぬまで
動きの少ないドンコですが、分厚い唇や怒ってるのか悩んでるのかなんとも言えない顔つきが可愛いといった声があり、鑑賞魚として飼育されている方も少なくありません。
ドンコは、最大で25cm前後、寿命は7年前後と長生きします。
ドンコに限らず、生き物は死ぬまで必ず飼い続けると覚悟を決めてから飼育しましょう。
地域によってドンコは国内外来生物として問題視されています。自然への放流は厳に慎みましょう。
ドンコは60cm規格水槽で飼育可能です
ドンコは一般的な水槽である60cm水槽で終生飼育が可能です。
ドンコは縄張り意識の強い食欲旺盛な肉食魚であるため、他同種共に混泳は難しいと考えましょう。
水槽の底に、砂利(大磯砂がオススメ)を敷くと落ち着き、土管や流木を沈めてあげると隠れ家として利用します。
水位・水温変化や農薬・代掻きなど、水質の変化が激しい田んぼの水路などにも生息するようにドンコは比較的強い魚ですので魚の飼育入門者でも大丈夫でしょう。
ドンコの適水温と真夏の高水温対策
適水温は15~23度、27度までなら体調を崩すこともあまりないため、日本の淡水魚としては高水温に比較的強いといえるでしょう。
しかしながら、近年の真夏は猛暑が続くこともあり、水槽の温度が思わぬ高温になってしまうことがあります。
水槽用ファンを設置したり、クーラーで室温を下げたりする対策をオススメします。
ドンコの餌は活き餌 “人工飼料”への餌付き方は個体差がある
飼いはじめは、ドンコの大きさに合わせてメダカや小赤を与えましょう。
水槽の環境に慣れ活き餌をよく食べるようになってきたら、栄養バランスの取れた人工飼料への餌付けにチャレンジしましょう。
10cm未満の個体でしたら数日、それ以上なら1週間程度断食させた後(飢えさせることがコツ)、ドンコの鼻っ面に沈下性の餌(キョーリンのキャットがオススメ)を落とし込みましょう。
ドンコは比較的人工飼料に餌付きやすい魚ですが、個体によっては全く食べないものもいますので、活き餌のみで終生飼育となる可能性があるということを飼育前にしっかり理解しておきましょう。
ペットは死ぬまで飼育しましょう
陽気なドンコの場合、人影を見ると水槽の前面に出てきて餌をねだるような仕草を見せてくれる個体もいます。
反対に引っ込み思案な子はなかなか人工餌に餌付かなかったり、愛想を振りまいてくれなかったりもします。
ドンコに限らず、生き物には性格があり、時には病気にもかかります。
もっと明るい性格が良いからとか、病気で可哀そうだから、といった身勝手な理由で生き物を野外に逃がす行為は良くありません。
重ね重ねになりますが、ペットを飼育する場合は、最後まで看取る覚悟を決めてから家族に迎え入れてあげるようにしてあげましょう。
筆者紹介
山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。
餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活躍する。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017