メバルについて
メバルの特徴は大きな目

大きな目と口、暗色でやや体高の高い魚体が特徴のメバルは、釣りのターゲットとしても人気の魚です。
メバルの仲間として、ムラソイやクロソイ、タケノコメバル、エゾメバルなどが該当し、いずれも魚釣りの好ターゲットとして知られます。
生息域は北海道南部から九州沿岸部

提供:T.S.V 木村紘大
メバルの生息域は北海道南部から九州にかけての沿岸部であり、堤防や磯などから手軽に釣れます。
メバルは海藻が多く繁茂する岩礁帯を好む傾向にあり、カサゴのように単体で着底しているのではなく、小規模な群れで海藻に沿うようにホバリングしていることが多いです。
3種類のメバルが存在する

メバルという呼び名は総称であって、じつは“アカメバル(Sebastes inermis,1829)” “クロメバル(Sebastes ventricosus,1943)” “シロメバル(Sebastes cheni,1988)”の3種類に分けられていることをご存知でしょうか?
メバルの分類はいくつかの種類に分けられたり、また1種にまとめられたりと、100年もの長きに渡って分類学者の意見が一致しないという歴史がありました。
現在では、2008年に発表された論文によって3種に分類する考えが主流となっています。
メバルの種類はまだ増える?

提供:Tail Beat 土井慧祐(熊野灘産メバル)
一方で、アカメバルとシロメバル双方の特徴を持ち合わせたメバルが、和歌山県熊野灘に生息しているという最新研究も2023年に発表されています。※
この論文では熊野灘に生息するメバルについて、地域特有の個体群である可能性が示されています。
この先も、メバルの分類に関する研究から目が離せません。
※参考文献:Genetic divergences and hybridization within the Sebastes inermis complex, Deville D, Kawai K, Fujita H, Umino T. 2023. PeerJ 11:e16391
メバル3種の特徴と見分け方
メバル3種類を見分けてみよう

メバル3種の違いは、体色・胸鰭軟条数・側線有孔鱗数・鰓耙数などによって判断され、遺伝的分析によっても完全に識別可能とされています。
体色と胸鰭軟条数に関しては、リリース派の人でも比較的簡単に判断できる項目です。
ただし、体色だけでなく計数項目についても多少の個体差がありますので、あくまでも目安として捉えてください。
アカメバル(Sebastes inermis)

アカメバルの生息域は北海道南部から九州であり、体色が暗赤色や明るい茶色であることが特徴。
胸鰭軟条数は15、側線有孔鱗数は36~44、鰓耙数は31~37です。
クロメバル(Sebastes ventricosus)

クロメバルの生息域は岩手県および石川県から九州であり、背中が緑がかった黒色で腹側が銀色であることが特徴。しばしば釣り人からはブルーバックと呼ばれます。
胸鰭軟条数は16、側線有孔鱗数は43~49、鰓耙数は35~39です。
シロメバル(Sebastes cheni)

シロメバルは岩手県および秋田県から九州に分布し、金色がかった茶色の体色が特徴。
胸鰭軟条数は17、側線有孔鱗数は37~46、鰓耙数は32~37です。
メバルの生態について
メバルが好む棲息環境
シロメバル:内湾を好む

藻場や岩礁帯を好む性質はメバル3種の共通事項ですが、なかでもシロメバルは内湾を好む傾向があります。
そのため、シロメバルは堤防や漁港で見かけやすく、一カ所で群れていることも多いので3種の中でもっとも釣獲される機会が多いと言えるでしょう。
体色にバリエーションが多く、明るい茶色の個体はアカメバルと間違われやすいです。
アカメバル:岩礁帯にピンポイントで着く

提供:T.S.V 木村紘大
アカメバルは外洋に面した磯場から内湾まで幅広く生息するメバルです。
シロメバルのように一カ所で連発するような釣れ方は少なく、よく釣れるポイントをランガンしてポツポツ拾い釣っていくような印象があります。
クロメバル:回遊性が高く外洋に面した岩礁帯に生息

クロメバルは回遊性が高いとされ、潮通しの良い地域で釣れることが多いです。
回遊に当たると、夜だけではなく日中にも釣れやすいとされています。
活き餌を好む肉食性

メバル3種は総じて、アミやエビの仲間といった甲殻類、頭足類や多毛類、そして小魚などを捕食する肉食魚です。
メバルの食性調査を行った研究によると、メバルが食べている餌は浮遊性や遊泳性の強いものが大半を占めているとされています。
海底に生息する生物を主食とするカサゴとは対照的な食性傾向です。
メバルは子供を産む卵胎生

多くの魚は卵を産み、海中で精子をかけて受精させますが、メバルは交尾を行って雌の体内で受精させます。
地域によって差はあるものの、11月から12月に交尾を行い、1月から2月に雌が産仔することが多いです。
メバルの最大サイズと年齢について
メバルの繁殖年齢について

メバルの雄は1~2歳、雌は2~3歳で性成熟するとされています。
成長速度は地域や個体によって差があるものの、一般的に2年で全長16cm、4年で22cmほどに到達。
5年目以降は雌雄で成長速度に差が生じ、10年で雄は27.2cm、雌は29.2cmになったという研究結果があります。
メバルの最大サイズは35cm前後

提供:T.S.V 木村紘大
メバルは3種とも最大で30~35cm程度まで成長する魚です。
30cmを超えると尺メバルと呼ばれ、メバル釣りをするアングラーの間では1つの目標とされています。
3種類の中では、シロメバルがもっとも大きくなりやすいとされていますが、アカメバルやクロメバルも30cmを超えてくるため、最大サイズという点では大きな差はないのかもしれません。
尺メバルは13才前後

提供:T.S.V 木村紘大
メバルは比較的長寿な魚であり、10年以上生きることが知られています。
雄よりも成長速度が鈍化しにくい雌は10~13歳で30cm、つまり尺メバルになるようです。
メバルの視力と視野について
メバルの視力は0.1~0.2程度

メバルは目が良い魚と言われますが、視力は0.1から0.2程度とされています。
スズキやアジも0.1程度であり、メバルだけが取り分け視力が良いとは言えないようです。
ちなみに、視力が良いとされる魚は大型魚や回遊魚であり、マグロ・カツオ・カジキ類は0.3から0.5とされています。
夜でも良く見えている?

視力という観点では、他の魚と大差のない値になりますが、目の良さとは単純な視力だけではありません。
メバルのように夜行性が強い魚や深海に棲む魚の中には、目の大きい魚が多く、これは暗がりでも光を多く集める目的があると言われています。
ただし、メバルの視力に関する研究例は少なく、詳しいことは分かっていないのが現状です。
“ハリスを見破る説”について

メバルは太いハリスを使用すると釣果が落ちる場合があり、とくに餌釣りではその傾向が顕著だとされます。
「メバルは目が良いから太いハリスを見破っている」という考えがある一方、「太いハリスを使うことで餌が不自然な動きをする」という説もあるようです。
メバルは餌の動きをよく見ており、例えば同じアオイソメでも良く動くものと弱ったものとでは釣果に大きな差が生じます。
メバルの釣れる時期と時間帯
ハイシーズンは冬から春にかけて

メバル釣りのベストシーズンは地域によって差があるものの、一般的に11月下旬から5月ごろまでです。
釣り場を見極めることで周年釣れる魚ではありますが、メバルの適水温は12~16℃と低く、水温が上昇する晩春から秋にかけては、沖合や深みに移動するので釣れにくくなります。
1月から2月に一時的に釣れにくくなることも

提供:Tail Beat 土井慧祐
ベストシーズンの中でも、1月から2月の間に一時的に釣果が低迷する期間があります。
親魚が産仔する時期と重なることから、この期間にメバルは活性を落とすとか、釣り場となる海域から離れているのではないかと考えられています。
夜の方がよく釣れる

メバルは昼夜を問わずに釣れる魚ですが、夜間に中層から表層へ浮上してくるので釣りやすくなります。
ルアーや餌への警戒心も夜の方が薄く、メバル釣りに挑戦する場合は夜釣りがオススメです。
月明りが無い穏やかな時が狙い目

メバルは気象条件によっても釣果に差が出やすく、海況が穏やかな日がオススメです。
また、月明りが無い時間帯の方が食いが良く、月が沈む時間帯や月齢を把握してから釣行するのがコツ。
一方、常夜灯などの光に集まる傾向があるため、ライトの周りや明暗部も好ポイントです。
メバルの釣り方について
ルアーを使ったメバリング

メバルはルアーへの反応がとても良く、メバリングという呼び名で1ジャンルを形成しています。
オモリと針が一体となったジグヘッドに、2in程度のストレート系ワームを装着する釣り方が一般的です。
プラグへの反応も良好で、シンキングペンシルやミノー、トップウォータープラグでも釣れます。
▼メバリングを解説した記事です
電気ウキを使った夜のウキ釣り

提供:tsuki
堤防から餌釣りでメバルを狙う場合は、電気ウキを使った夜釣りが一般的です。
餌は生きたシラサエビ(モエビ)やアオイソメが効果的。餌が動かなくなると食いが悪くなるので必ず活きの良いものを使用しましょう。
防寒さえすれば、厳寒期にもよく釣れるので楽しめますよ。
▼メバルのウキ釣りを解説した記事です
胴突き仕掛けやサビキを使った船釣り

提供:tsuki
メバルは船釣りでも人気のターゲットであり、専門に狙う遊漁船も多いです。
昼間の場合は、シラサエビを餌にした胴突き仕掛けやメバル専用サビキ仕掛けが用いられます。
また、半夜便も人気があり、夜釣りの場合はアオイソメも効果的です。
▼メバルサビキを解説した記事です
まとめ

提供:Tail Beat 土井慧祐
今回の記事を読んで、「メバルって3種類もいたの!?」と思った方も多いでしょう。
僕は魚釣りの醍醐味の1つに、釣り上げた魚の正体を突きとめることもあると思っています。
メバルは身近な魚ですので、ぜひこの機会に自分が釣ったメバルが何メバルか見分けてみてはいかがでしょうか。
ひょっとすると、熊野灘のような地域特有の個体群があなたの通う釣り場に生息しているかもしれませんよ。
撮影:山根央之