最大2m、20kgにまで成長する世界最大級のウナギ“オオウナギ”
オオウナギ(Anguilla marmorata)について
オオウナギ(Anguilla marmorata)は、ウナギ目ウナギ科ウナギ属に分類されるウナギの仲間です。
その名の通り、ウナギの仲間でも特に大きく成長します。1.3mを超えるものも珍しくなく、最大では2mにも達すると言われています。
オオウナギは、ニュージーランドオオウナギ(Anguilla dieffenbachii)と並び世界最大級のウナギと言っても良いでしょう。
ちなみに、世界にウナギの仲間は19種類が知られており、日本在来のウナギはニホンウナギとオオウナギの2種類です。
実は広い“オオウナギの生息範囲” ところによっては天然記念物
オオウナギは、太平洋とインド洋の熱帯から亜熱帯地域に広く生息しています。
日本における生息範囲は、千葉県から沖縄県にかけてになります。
沖縄県ではニホンウナギよりもオオウナギの方がよく釣れますが、沖縄県以外ではとても珍しい存在で、捕獲されるとちょっとしたニュースになります。
※各県や市町村によっては、オオウナギが天然記念物に指定されている場合があります。
オオウナギとニホンウナギの見分け方
形はよく似ていますが、しっかり観察すると色合いや長さに対する太さでオオウナギとニホンウナギ(普通のウナギ)を比較的簡単に見分けることができます。
■オオウナギとウナギの違い
- ・体にマダラ模様がある=オオウナギ
- 模様がない=ウナギ
- ・肉付きがよく体長に対して太い=オオウナギ
- 細長い=ウナギ
オオウナギは別名カニクイウナギと呼ばれます
オオウナギの食性は、強い肉食性でときに腐肉も漁ります。「カニクイウナギ」と呼ばれるほど、甲殻類が好物なようで、カニやエビの仲間をよく食べます。
他の魚が手出しできないモクズガニなど、大きなカニまで襲うというから凄いですよね!
他にも小魚は勿論、カエルやネズミといった口に入る大きさの小動物も餌にします。まさに川のモンスターです。
オオウナギの生態や寿命について
オオウナギの産卵はニホンウナギと同様に海で行われる
オオウナギの産卵場所は正確には明らかになっていませんが、太平洋に生息するオオウナギはニューギニア北部で産卵しているのではないかと考えられています。
オオウナギの稚魚もレプトケァルスであり、生まれた場所から海流に乗って沿岸域にやってきます。
こういった生態もニホンウナギと同じですね。
オオウナギが潜む環境は……意外と幅広い
沖縄では、マングローブ帯や流れの緩やかな川に多く生息しています。
小さなオオウナギは「大雨の日の夜に川から這い上がり、近くの池に移動する」なんて言われることを裏付けるように、池や沼にもオオウナギは生息しています。
水質悪化にもある程度の耐性があるようで、都市部を流れる河川や水路にも姿を現します。
え?本州の都市部でもオオウナギ!?
実際に僕も本州の都市を流れる三面コンクリートのドブで、オオウナギを捕まえたことがあります。
憧れのオオウナギ捕獲に嬉しすぎて発狂しちゃいました(笑)
ストラクチャーも何もないこのドブ、なんと50m以上も水深20cmが続いていました。
確かに餌は捕りやすいのかもしれないけど、大胆すぎる夜のオオウナギの性格を目の当たりにした出来事でした。
オオウナギの寿命は40年以上
ウナギの仲間は一度産卵すると死ぬと考えられているため、オオウナギの寿命が40年前後ということは……。
居心地の良い場所を見つけたオオウナギはそのくらいの長い間、川に留まる可能性があるんですね。
そんな生態もあるため、和歌山県富田川では、オオウナギが生息する18kmの範囲を天然記念物に指定し環境ごと保全しています。
沖縄県ではそれほど珍しくないオオウナギ
本州でこそ珍しい存在なオオウナギですが、沖縄県では狙って釣れるくらい生息しています。
例えるならば、近所のマナマズといったところでしょうか。那覇市内を流れる川にも普通に生息しています。
本州であんなに苦労したオオウナギ探しって何だったんだ……ってくらいたくさん釣れちゃうんですね。
沖縄には何故、そんなに沢山オオウナギがいるのか?
答えは恐らく“オオウナギは食べて不味いから”ですね(笑)
地元の釣り人からも外道として扱われ「オオウナギを釣っても食べられない」と言って嫌がる釣り人が多いようです。
そもそも、海水魚が豊富な沖縄県民はわざわざ淡水で釣りをしないってのもあるでしょう。
オオウナギに限らず、魚の量って食用として利用されないことでこれほど資源量が増えるんだとよく感じます。
那覇の街中でオオウナギ釣り!仕掛けや餌、シーズンは?
オオウナギを釣りやすいポイントは都市型河川
オオウナギは、沖縄本島であればおおむねどの河川にも生息しています。
やんばるまで行かずとも那覇市内を流れる川でも大丈夫です。
手堅く狙うなら、海の水が若干入り込む汽水域(待つ釣り)か川幅が狭く水深の浅い川の堰下(ランガンする釣り)が良いでしょう。
沖縄のオオウナギ釣りの時期、ベストシーズンは……
那覇の平均的な最低気温は1月でも14度と高く、オオウナギは1年中狙うことができます。
とはいえ、やはり水温が上がる時期に活性も高くなるので、狙って釣行される方は春から秋にかけてが良いでしょう。
僕は、1月、6月、8月と釣行しましたが、幸いにもどの月も釣果に恵まれました。
オオウナギが釣れる時間帯は薄明薄暮
オオウナギは夜行性であるため、基本的に夜釣りとなります。
夕暮れ時から日暮れ後3時間が狙い目です。
意外なことに深夜は食いが渋ることがありますので注意です。
オオウナギ釣りの餌はサンマやサバ
手堅くオオウナギに出会いたい方は、サンマやサバなどの青魚を餌として用意しましょう。
他にも、オオウナギ釣りの餌には魚肉ソーセージやフライドチキンなんかも有効です。
何故かっていうと、オオウナギは嗅覚で餌を探す能力に長けているんですね。油っこいフライドチキンの拡散力が効くんです。
オオウナギを狙う仕掛けは単純!オモリと大きな針があればOK
▼ オオウナギ釣り|ロッドの選び方
1mを超えてくると引きの強さが一気に強くなるため釣り竿は、ジギングロッド程度の強度は欲しいところです。怪魚用ロッドでも良いでしょう。
エクストリーム TULALA エルホリゾンテ83
▼ オオウナギ釣り|ラインの号数
釣り糸は強度の高いPEラインがオススメ。ハリスはナイロン60lbもしくはPE10号程度でOKですよ!
太くても問題なく食いついてきますので、投げ釣りの場合はPE4号、小規模河川で足元を狙う場合はPE10号を目安にタックルを組みましょう。
サンライン 雷魚ブレイド
▼ オオウナギ釣り|フックの選び方
仕掛けは、中通オモリ10号程度にハリスを15cm程とったシンプルな物で大丈夫です。
「絶対逃がしたくない!」という方は、管付きがま深海20号前後が最適ですが、僕はバス用のオフセットフック8/0前後をオススメします。
カツイチ DECOY キロフックマグナム 8/0
がまかつ 管付がま深海 銀 19号
何故、オフセットフックが良いのか?
タックルの中で針を一番弱く設定することで、万が一、根掛かりしたときに回収しやすくなります。
オオウナギが岩の間や倒木の下などに潜り込むと入水して捕まえない限り捕獲は困難です。
万が一、針がオオウナギに残ってもバス用のフックは細い分錆びて抜けやすくなります。
無事釣れたオオウナギを写真に残したいところですよね!
今のところ沖縄県では数多く生息するオオウナギですが、生態系の頂点に君臨する生き物はちょっとした圧力の変化で一気に生息数を減らしてしまうことがあります。
リリースする場合は、コンクリートはなるべく避けて、草の上においてあげるなど魚体に外傷が付かないように配慮しましょう。
オオウナギは皮膚でも呼吸ができますので、魚体が濡れていれば比較的弱りにくい魚です。
写真撮影をする場合は、ガンガン水をかけてあげましょう!
気になるオオウナギの味は……?!普通のウナギとオオウナギを食べ比べてみた
沖縄で釣れたオオウナギを1尾持ち帰ってみました
クール宅急便でわざわざオオウナギを自宅まで配送し調理してみました。
当時の僕はオオウナギは不味いってのが、どうも気になったんですね。
以前、滋賀県のウナギ漁師さんからいただいたビワコオオナマズは、確かにめっちゃ臭くて不味かったけど……。
僕は何事も経験したい系の人間なんです。
オオウナギを捌いてみると何となく感じたナマズ感
見た目は真っ白な筋肉でウナギを単純にでっかくしただけ! って感じですね。
ただ、包丁を入れてオオウナギを開いていて脂っこさを全く感じなかったんです。どっちかって言うとビワコオオナマズ……。
僕はすでにこの段階でオオウナギにウナギっぽさを求めてはいけないなぁと感じております。
とはいえ、泥臭さは強くなく許容範囲内。一緒にタウナギを捌いてたという外的要因が影響したかもしれませんが(笑)
▼タウナギが気になる方はこちらの記事もご覧ください
オオウナギを蒲焼にしてみる
とにかくデカいです(笑)魚焼器に目一杯広げて焼いていきます。
やはり脂が滴るなんてことはありません。香りは予想に反して良く、空腹も相まって美味しそうって感じます。
ただ、加熱が進むにつれてどんどん身が縮んでいくのが気がかりです。
オオウナギの味は不味くはないが、ウナギとはかけ離れている
タレを塗って焼き上げ完成です! 早速アツアツのうちにウナギとオオウナギのかば焼きを食べ比べます。
うんっ、オオウナギの身質はとても引き締まっていて、ウナギではなくナマズ系ですね。若干鶏肉っぽいかな。泥臭くないし不味くはないですよ!
ただ、ウナギのかば焼きのような触感や味を期待するととても残念な感じになってしまうのは否めませんね。
オオウナギの身質はハッキリ言ってかば焼きには不向きですね。唐揚げやフライ、煮つけなんかも良いかもって感じです。
ウナギ=かば焼きという概念がある限り、オオウナギは絶滅しないで済む(山根 私心)
ウナギより大きく成長し、繁殖までに長い年月を必要とするオオウナギ。ウナギ以上に漁獲圧に脆弱なのは容易に想像できます。
もしも、かば焼きにして美味しかったら、恐らくとっくの昔に絶滅の危機に瀕したことでしょう。
「ウナギ=かば焼き」という日本人の固定概念がオオウナギの資源量を守ってるのでしょう。
筆者紹介
山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。
餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活躍する。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017