タングステンタイラバについて
タイラバのヘッドに使用されている素材には、鉛とタングステンの2種類があります。
主流となっているのは鉛製のタイラバですが、近年注目されているのがタングステン製のタイラバです。
今回は遊漁船船長の筆者が、そんなタングステン製タイラバについて詳しく解説していきます。
タングステン素材の特徴とは?
タイラバの話題に入る前に、まずは素材そのものに注目してみましょう。鉛と比べたときの、タングステンの特徴を説明します。
比重が大きい
単純にそれぞれの素材の比重を比較すると、鉛の比重が11.4なのに対して、タングステンの比重は19.3。
つまり、「タングステンの方が約1.7倍重い」ということです。これは、「同重量あたりの体積を小さくできる」とも言い換えられます。
ただし、両素材ともに合金化して加工するのが一般的で、混合する素材の割合によって比重は上下します。
硬度が高い
一言に硬度と言っても、様々な測定方法・定義がありますが、傷のつきにくさを表す尺度「モース硬度(1~10段階)」に注目してみましょう。
なんと、タングステン合金の硬度は9で、これはダイヤモンドの10に次ぐ数値です。
このことから、タングステンは非常に硬い素材であることが分かります。
タングステンタイラバのメリット
それでは、先述した素材の特徴を踏まえて、タングステン製タイラバのメリットを紹介します。
底取りがしやすい
上の写真からも分かるように、タングステンはヘッドの体積が小さいので、水の抵抗が少なく、鉛よりもフォールスピードが速くなります。
これは「底取りがしやすい」ということに繋がり、速潮、2枚潮、強風下におけるドテラ流し、ディープでの釣り、などでは絶大なメリットです。
手返しが良くなる
沈みが速いということは手返しが良くなるということでもあり、着底→巻き上げ(誘い)を1セットとしたときの、1回の投入におけるセット数が多くなります。
例えば、鉛だと1回の投入で3セットしたら回収となるところを、タングステンだと5セットになるといった具合です。
つまり、同じ時間釣りをしていても、底取りにかかる時間を短くでき、誘いの回数が多くなります。
釣果を伸ばすうえでもっとも大切な「釣りの効率化」を簡単に実践でき、おのずとヒットチャンスが増えるというわけです。
感度が良い
硬度が高いタングステンは、感度が良いというメリットも。
よく言われる「硬くて感度が良いから底が取りやすい」については疑問が残るところですが、ラインを張った状態においては感度は良くなります。
ただし、基本的に砂地での着底→巻き上げを繰り返すタイラバにおいて、感度の良さはそこまで大きなアドバンテージではありません。
とはいえ、海中から受け取る情報が多くなる・詳細になるということは、少なからずメリットだと思います。
スピニングタックルとも相性がいい
斜め引きやキャストしたい時はスピニングタックルが有効ですが、そんな状況で使いやすいのもタングステン製のタイラバです。
タングステンのフォールの速さに、スピニングリールのフォールの速さが加わり、相乗効果でフォールスピードが非常に速くなります。
また、空気抵抗も小さいので、キャスト時の飛距離も向上。さらには巻き抵抗も少ないので、巻き上げ力が弱いスピニングリールでも疲れにくくなります。
五目狙いに最適
体積が小さいということは、シルエットが小さいと言い換えることができます。
特定のベイトを偏食することも少なくないマダイにおいては、「シルエットが小さい=絶対に釣れる」というわけではありません。
しかし、五目狙いを楽しめるのもタイラバの良い所で、何かしらの魚を釣ろうと思ったときは、シルエットの小ささはプラス方向に働いてくれることが多く、アタリは増える傾向にあります。
マダイ以外にもいろいろな魚を狙いたいときには、タングステンがおすすめですよ。
砂モノにも効果的!
タイラバで釣れることも多いアマダイやマゴチ。いわゆる砂モノと呼ばれるこれらの高級外道を狙う際にも大きなメリットがあります。
それは、砂モノに有効な「砂ぼこり」を起こしやすいこと。フォールが速いタングステンは着底時の衝撃が大きく、砂ぼこりが舞やすく、硬さによる音のアピールも強力です。
砂モノのようなボトムレンジを広範囲に探る必要のある魚に対して、着底時のアピールが大きいのはメリットだと考えています。
タングステンタイラバのデメリット
では反対に、どのようなデメリットがあるのかを説明します。
アピール力が弱い
体積の小さなタングステンは水押しが弱いので、どうしてもフォール中や巻き上げ時のアピール力が弱くなってしまいます。
捕食しているベイトが小さいような状況では、シルエットの小ささも相まってアピールの弱さがプラスになることもありますが、当然その逆のケースもあります。
アピール力が弱いと感じたときは、ネクタイワームやトレーラーを付け足してカバーすると良いですよ。
高額
タングステン最大のデメリットと言えるのが、その価格の高さ。鉛と比べてタングステンが普及しない理由でもあります。
希少性が高くて加工が難しいことから高額になるのは仕方ありませんが、3,000~5,000円のルアーを無くしたときは堪ったもんじゃありません(笑)
ロストを避けるためには、漁礁や瀬周りなどの根掛かりしやすいポイント、フグやサワラといった歯の鋭い魚が多い状況は避けるようにしましょう。
こんな使い方もあります!
ここ最近、筆者が「アリだな」と感じているメソッドがあります。
それが、水深が浅いところや楽に底が取れる場面であっても、あえて重量級タングステン製タイラバを使う「ヘビータイラバ」。略して、ヘビラバ(勝手に命名しました笑)
鉛と同じ体積でも圧倒的に重たくなるという点を活かし、とにかくフォールスピードを速くして手返しを良くすることが目的です。
実釣で試してみても、シルエットを小さくする必要がない状況ならば、他を圧倒する釣果を生み出すことも少なくありません。
150グラム以上のタイラバでも、フォールスピード以外は鉛製の100グラムと使用感はほぼ同じで、特に喰いが悪くなるといったこともありません。
まだまだ筆者自身も検証段階の域を抜けてはいませんが、気になる方は是非お試しください!
もってて損はしない!
コスト的にいくつも買えるルアーではありませんが、タングステンのメリットが活きる状況も多いので、1つ2つはタックルボックスに忍ばせておくと良いと思いますよ。
持っていて、きっと後悔はしないはずです!
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船長オススメのタングステンヘッド
筆者の紹介
岩室拓弥
釣具店・釣具メーカー勤務を経て、現在は福岡市東区箱崎港から出船している遊漁船「エル・クルーズ」の船長。
職業柄オフショアがメインとなっているが、元々は陸っぱりがメインでメバリング・エギングなど様々な釣りの経験も豊富なマルチアングラー。