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【釣り×科学】ボラジャンプの理由は酸欠?調査でわかった酸素量との関係(3ページ目)

“どこにでもいる魚”の秘密

釣ったボラ

出典:PIXTA

整理してみよう。

・ボラの飛び跳ね行動は、水中の酸素濃度が低い時ほど、よく起こる。

・ボラはエラの内側、のどの上部に、空気をためられる釣り鐘状の袋をもっている。ボラが身体を横倒しや仰向けにすると、この袋から空気は出ていってしまう。

・ボラが水面から顔を出して泳いでいる時、のどの上部(空気袋の部分)は水面より上にあり、空気が通り抜けている。ボラが跳ねるとき、身体をひねって横向きや仰向けで着水することが多い。

Hoeseはこれらの観察事実から、ボラの飛び跳ね行動には、酸素の少ない状況での呼吸を補助する機能がある、と結論づけた。 のどの上部にある釣鐘状の袋(空洞)に空気をため込み、何らかの形で呼吸に役立てているのだろう、と推察したのだ。

 

(筆者注:これは、たくわえた空気に含まれる酸素を直接使うという意味ではない。口からのどに流れ込んだ酸素の少ない水が、のどにたくわえられた空気と触れ合うことで酸素を補充され、より酸素の多い状態でエラに流れていく、という仕組みではないかと推測する。例えていうなら、アメ玉を口に含んだ状態でただの水を飲むと、ちょっと甘い水になる、といった感じだろうか。)

彼の研究報告はここで結ばれているが、個人的には、かなり説得力のある説に思える。 読者の皆様は、いかがだろうか?

出典:PIXTA

酸素が少なくなりがちな内湾を主な生息域とするボラは、のどの一部に特殊な構造をもち、ジャンプや顔上げ泳ぎでときおり新鮮な空気を取り入れながら、日々、懸命に暮らしている。

そういう目線でかれらの姿を眺めてみると、いつもとは少し違った表情が見えてくるかもしれない。

文献情報

Hoese H. D. (1985) Jumping mullet ? the internal diving bell hypothesis. Environmental Biology of Fishes 13: 309?314.

執筆者

吉田 誠 (Makoto A. Yoshida) 博士(農学)

2017年9月、東京大学大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻博士課程修了。同10月より東京大学大気海洋研究所 特任研究員を経て、2018年4月より、国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 特別研究員。

専門は、動物搭載型の行動記録計(データロガー)を使った魚の遊泳行動に関する力学的な解析と野外での魚の生態研究。

小学生の頃、祖父との海釣りで目にした、海面に躍り出た魚の一瞬のきらめきに魅せられて、魚の研究者を志す。

「人と魚の間で繰り広げられる『釣り』という営みを、魚目線で見つめ直してみよう」、そんな視点から、釣り人の皆さんの役に立ちそうな学術研究の成果を紹介していきたい。

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