毛鉤について
毛鉤(けばり)は、動物の毛や鳥の羽などを巻き付け装飾した釣り針です。虫をイミテートし作られていることが多く、基本的には水面に落ちた羽虫や水棲昆虫などのように見せ、魚にエサと誤認させ食わせるように使用します。
日本と欧米には、共に毛鉤を使った釣法が存在しており、欧米のものは「フライ」と呼ばれ現在の日本にも多くの愛好家がいます。日本の毛鉤は、テンカラなどに代表される釣法で使用され、フライに比べシンプルな作りが特徴ですが、最近ではフライを参考にしたものも作られるようになっています。
伝統的な釣具
日本と欧米の毛鉤は、文化交流などによって伝わったものではなく、それぞれの発祥は紀元前とも言われるほど古くから存在している伝統的な釣具です。日本のものは主に漁具としての発展をしてきているのに対し、欧米のフライは、漁具としてはもちろん、スポーツフィッシングという文化を側面に持ちながら広まり発展してきています。
フライフィッシングの毛鉤
フライフィッシングに使用する毛鉤「フライ」は、長い歴史の中で地域やターゲットに合わせた様々な形状をしたものが産み出され、「ドライフライ」、「ウェットフライ」、「ニンフ」などのように体系化されています。
「ドライフライ」は水に浮かばせ使用し、「ウェットフライ」、「ニンフ」は水に沈ませて使用するなど、フライの特徴に合わせた使い方があり、魚のコンディションやフィールドの環境に合わせた選択をしていく奥深さがフライフィッシングの醍醐味の一つと言えるでしょう。以下では一部のフライについてご紹介いたします。
ドライフライ
水に浮かぶドライフライは、カゲロウなどの羽虫やアリやバッタなどの昆虫を模したものが多く、視認性を高めた作りをしているものなどもあります。水に落ちた虫などが流されてくるのを狙って水面を意識した魚に有効です。魚がバイトする大興奮の瞬間を見ることができるため、釣れたときの刺激をもとめて多用する愛好家の多くいます。
ウェットフライ
水に沈ませて使用するウェットフライは、魚の警戒心の高いコンディションに強く、ドライフライに対する反応が悪いときなどに有効なフライです。羽虫やその幼虫を模したものなど、その種類は非常に多くあり、水面直下を流すように使用します。ドライフライに比べ魚の反応が良いことも多々ありますが、アタリをとるためには慣れが必要なこともあります。
ニンフ
カゲロウの幼虫や蛹などの水棲の昆虫を模したフライです。水に沈めて使用するため、広義にはウェットフライの一種として分類されることもありますが、ニンフを使った釣りは「ニンフィング」や「ルースニング」とも呼ばれ確立したスタイルとなっています。低水温期などにも強く、非常によく釣れるフライの一つとなります。
その他の毛鉤を使った釣り
日本にも古くから伝わる毛鉤は、フライフィッシングとは異なり、狭い地域毎に漁業の「技」として伝統的に受け継がれるようにして発展してきた経緯があります。見た目よりも誘いに重きを置くためシンプルな造形のものが多く、日本の渓流事情では、毛鉤を沈ませて釣ることの方が効率的なことから、ほとんどが水に沈むタイプのものとなっています。
また、日本の狭い渓流では遠投よりも、近場を狙った手返しを重視するため、軽い竿を使い、複数の毛鉤を使った仕掛けがあるのも特徴です。以下ではフライ以外の毛鉤を使ったいくつかの釣りについてご紹介いたします
テンカラ釣り
日本の毛鉤を使った釣りとしては最も有名なのがテンカラ釣りと呼ばれる釣法で、主にヤマメやイワナ、ニジマスなどの鱒類をターゲットにします。3.5m~4mほどのテンカラ用の竿に、竿と同じ長さの道糸+ハリスを付け、先端に毛鉤を付けただけの非常にシンプルなタックルを用い、手返し良くキャストを繰り返していきます。
鮎のドブ釣り
アユ釣りと言えば友釣りを思い浮かべる方も多いかと思いますが、複数の毛鉤のついた仕掛けを投入し釣り上げる「ドブ釣り」と呼ばれる釣法も存在しています。やや緩やかな渓流にある川の淵(ドブ)に仕掛けを投入することからこの名前で呼ばれています。縄張りを持ち始める前の遡上期のやや小型のアユを狙うのに有効な釣法です。
流し毛鉤
「流し毛鉤」は、稚アユやオイカワなど小型の魚を中流域や河口付近で狙う釣法です。テンカラ釣法に比べ、高いキャストの精度は求められないため、タックルはテンカラ用のものからリール竿などでも可能です。1つまたは複数の毛鉤がついた仕掛けを流れに向かって垂直に投げ、仕掛けを下流に流しながら探っていくように釣ります。
毛鉤で狙える魚
虫や小魚などを模している毛鉤は、基本的に肉食、または雑食の多くの魚をターゲットとすることができます。海で毛鉤(フライ)を使用する「ソルトフライ」という釣法もありますが、多くの場合は淡水魚をターゲットにしていいます。
最近ではルアーにスレた魚にも小さな毛鉤は有効であったりする事もあり、様々なターゲットを毛鉤で狙う釣りが話題になることも少なくありません。以下では、身近なフィールドにおいて毛鉤を使って狙うことができるターゲットについて、いくつかご紹介していきます。
マス類
マス類をターゲットにして発展してきたと言っても過言ではない毛鉤。ニジマス、ヤマメ、イワナ等は毛鉤を使った釣りの代表的なターゲット。毛鉤の奥深さと趣を十分に感じ楽しむことができ、釣れたときの満足感が高いマス類は、多くの釣り人を夢中にしています。渓流だけではなく、多くの管理釣り場でも楽しむことができます。
鮎
初夏に河川の遡上を始める稚アユや若アユは、動物性プランクトンや水生昆虫などを捕食していることもあり、毛鉤を使った釣法で狙うことができます。特に初夏のアユは稚アユ時代の食性の記憶が鮮明であるためか、毛鉤に対する反応もよく、ドブ釣りや流し毛鉤などでアユ釣りを楽しむ人も多くいます。
オイカワ、ウグイ
低地の湖沼や、中流域にいるオイカワやウグイも毛鉤を使った釣りで狙うことができる、非常に身近なターゲットの一つです。小型の毛鉤の流し釣りやフライフィッシングで狙うことができ、繊細でありながらも気軽にできるため、毛鉤の楽しさと奥深さを十分に感じられ、初心者の方にもおすすめしたいターゲットです。
ブラックバス・ブルーギル
ルアーフィッシングの人気ターゲットであるブラックバスですが、フライフィッシングでおいても好ターゲットとして人気があります。フライにおいては「バスバグ」をはじめとした、ブラックバスをターゲットとしたボリュームのあるフライもあり、また、渓流用のフライではブルーギルの数釣りができることもあります
歴史ある万能釣り針「毛鉤」を使って釣ってみよう!
毛鉤は歴史が古く伝統的な釣具であり、趣のある様々な釣法などから、敷居の高いもののように感じる方もいらっしゃるのではないかと思います。実際には身近なフィールドで魚も釣ることができ、最新の釣具に勝ることもある毛鉤を使った釣りは、気軽に始められる釣りであります。皆様も是非一度、チャレンジしてみてくださいね!