日本に生息するシーバスは4種類(だと思う!)
世界にもSeabass(シーバス)と呼ばれる魚が沢山いる

もともと、Bass(バス)には口が大きい魚という意味があり、シーバスとは海(Sea)に住むバスという意味です。
シーバスとは日本では、スズキ科に分類されるスズキを意味しますが、欧州ではモロネ科に分類される魚だったり、アメリカではニベ科に分類されるものを意味します。
東南アジアではアカメ科であるバラマンディを大衆的にはシーバスと呼んでいます。
シーフードレストランで「バラマンディプリーズ!」って頼んでも、「何ソレ?」って言われます(笑)
日本産のシーバス“スズキ科”について

日本に生息するスズキ(Lateolabrax japonicus)は、スズキ目スズキ科(Lateolabracidae)スズキ属(Lateolabrax)に分類されます。
釣り人にとってあまりにも有名な魚かと思います。
では、日本にはスズキ科に分類される魚が何種類いるかご存知でしょうか?
余談ですが、Lateolabrax ラテオラブラックスってめっちゃカッコイイですよね!
日本に生息するシーバス(スズキ)は3種類+α

シーバスフィッシングを楽しむ方は「3種類!」と答える方が多いかと思います。
現行の図鑑上では確かに3種類のシーバスが掲載されています。
しかしながら、中には有明海に生息するスズキは第四のシーバスと考える人もいるはずです。
今回の記事では、主にスズキ・ヒラスズキ・タイリクスズキの生息環境をご紹介しますが、ぜひこの機会に有明産スズキの存在も知っていただければ嬉しいです。
大衆魚・スズキ(Lateolabrax japonicus)
もっとも一般的なシーバスと言えば「スズキ」

「マルスズキ」とも呼ばれるスズキは北海道南部から九州にかけて、朝鮮半島では東部から南部にかけて広く分布します。
地域によって細かな差がありますが、冬に外洋もしくは外洋の海流の影響を受ける場所で産卵および越冬し、春から秋にかけて内湾や河川に侵入するといった大きな規則的な季節性回遊を行います。
スズキは生息範囲が広い!

スズキは浸透圧調整が上手な魚です。つまり、海と川を行き来することができるんですね。
とくに高水温の時に淡水耐性が向上することが知られています。利根川では100km以上も遡上するというから驚きです。
スズキは生きた餌なら何でも食べる

食べる餌も、小さな動物プランクトンから大きなボラまで多種多様、生きたもので口に入れば何でも襲います。
また、シーバス釣りには偏食(へんしょく)という単語が用いられるほど、一度狙った餌があると他の生き物には見向きもしないという性質も持っています。
水面でシーバスが餌を捕食するボイルが起きているのに、全然ルアーに掛からない……(泣)
なんて経験を皆がしていると思います。
シーバスの最大サイズって?
JGFAの記録によると、マルスズキの記録で126cm/13.14kgが釣獲されたシーバスの最大サイズとして、認定されています。
荒波のハンター・ヒラスズキ(Lateolabrax latus)
アングラー憧れの存在“ヒラスズキ”

スズキ属に分類されるヒラスズキは、茨城県から鹿児島県にかけての太平洋側、日本海西部、朝鮮半島南部における沿岸域に生息しています。
スズキに対して体高が高いこと、目が大きい事で簡単にですが見分けることができると思います。
細かい点では、スズキの背鰭軟条は12〜15であるのに対し、ヒラスズキは15~16本であることや横列鱗数が少ないこと、下顎下面に1列鱗があることなどから見分けられます。
ヒラスズキの生息範囲は狭い

ヒラスズキは主に外洋に面した地域に生息しています。例えば関東では房総・三浦・伊豆半島が生息地域。
外洋から純淡水まで生息するスズキとは対照的に、ヒラスズキは沿岸に固執する魚です。
スズキほど浸透圧調整に優れておらず、河口域に顔を出すことはありますが何キロも遡上することはありません。
また、ヒラスズキは水産資源として利用されることが少ないため、生態研究が進まないのも現状で、未だ謎に包まれた魚です。
ヒラスズキはサラシが出れば狂ったように捕食し、凪れば沈黙する

スズキと同様にさまざまな生き物を捕食するヒラスズキですが、ご覧のような凪の日に釣行すると全く口を使ってくれません。
逆に風やウネリによってできる「サラシ」と呼ばれる白い泡があると、一転して何でも襲い掛かるハンターになります。
サラシの中では、スズキのような偏食はあまりせず、小さな餌を食べていても大きなルアーに襲い掛かってきたりします。
どちらかといえば、荒波の中で存在感を出せるルアーが重要になってきます。
外来種・タイリクスズキ(Lateolabrax maculatus)
シーバス界にも外来魚問題は存在します

タイリクスズキは、黄海、渤海沿岸、東シナ海と北部南シナ海の中国大陸沿岸が原産地とされます。
成長が早いことから、養殖業者が中国からタイリクスズキの種苗(稚魚)を大量に輸入し始めたのは1989年頃のことです。
以後、養殖されているタイリクスズキの逃げ出しや遺棄が多発したことにより、現在では四国や瀬戸内などの中心に釣りあげられることがあるほどに定着してしまっています。
タイリクスズキの特徴は体表の黒い点

タイリクスズキは別名ホシスズキとも呼ばれるように体表に目立つ黒い点が特徴です。
とはいえ、スズキにかなり近い種類であり、日本では2013年まで学名が与えられずLateolabrax sp(スズキの一種)として扱われていました。
黒斑はスズキの幼魚にも見られる模様ですが、タイリクスズキでは成魚になっても殆どの個体に残るのが特徴。
細かな点では、有孔側線鱗数や鰓把数、脊椎骨の数がスズキと異なります。
ちなみに背鰭軟条は12~15本とスズキと同様です。
マックス130cm!夢の特大タイリクスズキ

高知県では1メートルを超えるタイリクスズキが、ときどき釣獲されます。
大きなタイリクスズキが釣れることは嬉しいことですが、スズキとの交雑の心配が残る以上、気がかりな存在であることに違いありません。
朝鮮半島では、もともと同所的にスズキとタイリクスズキが生息する地域があるので、場所によっては自然交雑が起きないことが明らかです。
しかしながら、スズキとタイリクスズキの交雑は可能であり、本来の生息域外である日本沿岸で今後どうなっていくのか注視すべきだと言われています。
ヤマトイワナとニッコウイワナのような関係のように、純血スズキが将来いなくなってしまわないように願うばかりです。
タイリクスズキの原産地では河口から下流域が狙い目

原産地でタイリクスズキを狙う場合、真水が感じられる場所が主な釣り場となります。
時には淡水魚を狙っていて掛かることもあるので、スズキと同様にかなり淡水耐性が強いと推察できます。
第四のスズキ・アリアケスズキ(仮称)
アリアケスズキはいつか新種記載されるかも?

その名の通り、有明海に生息するスズキなのですが、小さな黒点を持つ個体が多い事が昔から知られています。
ざっくりいうと、有明海にスズキとタイリクスズキの中間的な第四のスズキが生息しているといった説があるのです。
「それって逃げ出したタイリクスズキと交雑しちゃってるじゃん!」と思われるかもしれませんが……。
有明海産スズキのゲノムを調べた研究では、スズキとタイリクスズキ双方の特異的なDNA断片を様々な割合で持ち、ゲノム構成はモザイク状であることが明らかとなっています。また、雑種第一代と推定される個体は確認されていません。
つまり、有明海産のスズキは、過去(約1万年前)の種間交雑に起源し、現在では独立的に存続している個体群であると考えられています。
はっきりしないアリアケスズキはモヤモヤさせる存在

10年ほど前、アリアケスズキの存在なんて全く知らなかった頃、有明海で釣ったシーバスです。
確かに背ビレに黒点は確認できますが……。体高も高い気がするけど、体表に黒点無いし。
このモヤモヤとした感じがたまりません!(笑)
もっと有明海産スズキに詳しくなるために、アリアケスズキを狙った遠征をしてみたいと思っています。
そしていつの日か、新種や亜種としてアリアケスズキが図鑑に載る日がくると信じて楽しみにしています。
筆者紹介

山根 kimi ヒロユキ
“初めての1匹”を求めて、世界中どこへでも行く怪魚ハンター「山根ブラザーズ」の兄。釣りに留まらず、ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017