セルロースセメントについて
セルロースセメントとは、コーティング塗料の一種で、ルアーのコーティング材として使用されているものの一つです。植物繊維の主成分であるセルロースをニトロ化したもの(ニトロセルロース)と樹脂、可塑剤などを溶剤で混合したものです。
バルサやウッドなどの木材を使ったルアーの下地として使われており、木材の表面に染み込みながら薄く硬い皮膜を形成します。乾燥時間が短く作業性が良く、溶剤によって濃度調整も可能なことから、他のコーティング材に比べると取り扱いし易いといった特長があります。
セルロースセメントの使い方
セルロースセメントには、「ルアーの下地作り」、「ルアーのトップコート」の二つの場面での用途があります。「下地作り」では、バルサ材などにセルロースセメントを染み込ませることにより強度を上げ、装飾、塗装などをし易くします。
「トップコート」では、ウレタン系やエポキシ系の塗料も良く使われますが、セルロースセメントでも可能です。装飾、塗装をしたルアーをセルロースセメントでコーティングする事で、表面を保護・強化し、光沢を持った仕上がりにする事ができます。
木材の目止め・下地作りでの使い方
ルアーとなるブランクが完成したら、以下の手順でセルロースセメントで木材の上にコーティングをします。
【1】セルロース液へのドブ漬け
成形しアイやウエイトを取り付けたブランクを、セルロースセメントが入った容器に浸しゆっくりと引き上げます。
【2】乾燥
引き上げたブランクを湿気の少ない場所で乾燥させます。乾燥時間はセルロースセメントの濃度や気温、湿度によって変わります。夏場で3~6時間以上、冬場なら6時間~12時間以上を目安としておくと良いでしょう。
【3】再度ドブ漬け
乾燥が終わったら、やすりでバリなど取り、ルアーの上下を交互に入れ替えながら再度ドブ漬-乾燥をし、ブランクの表面に光沢が出るまで繰り返します。
【4】表面の研磨
3~4回ドブ漬けと乾燥を繰り返し、表面に光沢が出てきたら400番~600番の紙ヤスリで研磨し、表面の凹凸をならします。
これらの作業を1セットとし、3~5回繰り返す事で木材の表面を強化し、防水性を付与すると同時に表面を滑らかに仕上げる事ができます。ただし、乾燥からドブ漬けの間が48時間以上あいてしまうと、硬化が進んでしまった層と新しい層の収縮率の差が大きくなり、表面にひび割れが発生してしまいます。
酷くひび割れてしまうと表面を削って全てやり直す事にもなるため、下地作りを実施する際には間があかないよう計画を立てるのがおすすめです。
トップコーティングでの使い方
セルロースセメントは、塗装を終えたルアーの表面を保護する役割も果たします。保護するだけでなく、仕上がりの美しさを大きく左右する工程でもあるトップコーティングの手順を紹介します。
【1】塗装面の色止め
装飾、塗装を終えたブランクに、濃度を薄めたセルロースセメントをエアブラシで薄く吹き付けます。乾燥したら3回以上塗装を重ねると確実な色止めが可能です。セルロースセメントの代わりにクリアラッカーを使う方法もあります。
【2】乾燥
色止めしたブランクを湿気の少ない場所で乾燥させます。
【3】ドブ漬け
やすりでバリなど取り、ルアーの上下を入れ替えながらドブ漬け-乾燥を3回程繰り返します。ドブ漬け回数に比例してコーティングは強くなりますが、重量も増えていくため、小さいルアーでは注意が必要です。
ドブ漬け後に乾燥したら、スプリットリングやフック、アイ等を取り付けてルアーが完成します。トップコーティングのドブ漬けでも、下地作りの時と同じく、乾燥からドブ漬けの間が48時間以上あいてしまうと表面にひび割れが発生してしまいます。
最後の工程も気を抜かずに計画的にやるのが美しいルアーを仕上げるコツと言えるでしょう。
セルロースセメントの注意点
セルロースセメントは、使用方法、条件によっては「色流れ」、「白かぶり(白濁/白化)」という現象を引き起こしてしまう場合があります。「色流れ」、「白かぶり」が起きてしまうと、ルアーの動きには影響しませんが、折角の塗装が滲んだり、濁ったようになってしまったりと見栄えを大きく損なうことになってしまいます。
これらの現象は、主にセルロースセメントに使用されている溶剤の特性によって引き起こされているものであり、対策を取る事である程度防ぐことが可能になります。以下では「色流れ」、「白かぶり」の主な対策についてご説明いたします。
「色流れ」について
塗装に使った塗料がセルロースセメントの溶剤によって塗装面が溶かされる現象が「色流れ」です。ルアーの仕上げの最後の最後で塗装が滲んだり薄くなったりと、せっかくのルアーを台無しにしてしまう恐ろしい現象です。
これを防ぐためには、セルロースセメントの原液に「リターダー」と「薄め液」を添加して濃度を薄め、最小限のセルロースセメントで慎重に複数回コーティングし「色止め」をすることで色流れを防止できます。ドブ漬けでも色止めは可能ですが、エアブラシやスプレータイプのセルロースセメントを使うとより確実です。
「白かぶり」について
湿気が多い環境では、セルロースセメントが急激に乾燥していく際の気化熱によって、コーティング面に結露が発生します。「白かぶり」は結露で発生した微細な水滴が付着することで表面がざらつき、擦りガラスのように白濁する現象。トップコートで「白かぶり」が起きようものならルアーが一気にダメになってしまう、なんとも頭の痛い現象です。
夏場・雨天など湿気が多い状況ではコーティング作業は避けるか、除湿された室内での作業が望ましいでしょう。また、セルロースセメントの硬化速度を遅くする「リターダー」を添加して気化熱の発生を穏やかにすることで、「白かぶり」の原因となる結露の発生も起きにくくすることができます。
おすすめセルロースセメント4選
セルロールセメントはいくつかのメーカーから発売されており、製品によって物性に若干の差があります。また、容器の形態も缶入りの物や、スプレータイプの物があり、用途によって使い分けることで作業性が向上します。
缶入りのものは500mlと1000mlの物が主となっていますが、初めて購入するというのであれば500mlでも十分ではないかと思います。以下ではルアービルディングをする上でおススメの製品をいくつかご紹介いたします。
ルアーの自作やリメイクにチャレンジしてみよう!
自作の釣り具で魚が釣れた時の感動はとても忘れ難いもの。特に直接魚とコンタクトするルアーであれば尚更ではないでしょうか。セルロースセメントがあれば、自作に自信がない方でも、使わなくなってしまったルアー等を使いリペイントを楽しむことができます。
是非自分だけのオリカラルアー作成にチャレンジしてみてくださいね!