そもそも『怪魚』って何?日本三大怪魚はどんな魚?
日本三大怪魚って何?

みなさん、こんにちは。怪魚ハンター山根ブラザーズ兄です。
突然ですが、『日本三大怪魚』って言葉を聞いたことはありませんか?
限られた地域にしか生息していなかったり、釣り上げることがとても難しかったり、外見や生態が特徴豊かな魚は、しばしば「怪魚」と呼ばれることがあります。
なかでも最大サイズが1mを超える『アカメ・イトウ・ビワコオオナマズ』を釣り人達は、“憧れ”と“敬意”を込めて『日本三大怪魚』と呼びます。
イトウ|北海道に生息するサケ・マス系怪魚

イトウは、最大で120cm前後にまで成長するサケやマスの仲間です。
北海道からロシア南部にかけて生息し、イトウが小鹿を飲み込んだとか、2mを超えるイトウがいるとか……数々の伝説が伝えられている怪魚です。
▼イトウの最大サイズや特徴的な繁殖生態はコチラ
ビワコオオナマズ|琵琶湖・淀川水系に生息するナマズ系怪魚

ビワコオオナマズは、世界で日本の琵琶湖・淀川水系にのみ生息する固有種で最大で130cm前後にまで成長します。
イトウとアカメは海と川を行き来するのに対し、ビワコオオナマズは生涯を湖や河川で過ごす純淡水魚です。
▼ビワコオオナマズを狙った釣行記はコチラ
アカメ|四国・九州沿岸に生息するラテス(アカメ)系怪魚

さて、今回の記事の主人公であるアカメは広い意味でスズキの仲間であり、赤く光る目が大変特徴的です。
世界共通の学名には(Lates japonicus ラテス ジャポニクス)という名前が与えられている通り、世界で四国および九州にしか生息していない日本の固有種です。
ちなみにアカメの目が赤く光る理由は、僅かな光でも視力を得る為にタペータム(輝板)と呼ばれる器官を持ち、輝板によって血液の色が反射するためであると言われています。
アカメの最大サイズや日本記録、アカメの近縁種について
アカメの最大サイズや世界記録について

JGFAのHPによると、現在アカメの世界記録は2016年11月に釣り上げられた132cm 39.00kgとされています。
他にも体重の差で記録にはなっていませんが、135cmを超えるような巨大なアカメも確認されています。
アカメの近縁種“バラマンディ”

アカメが分類されるラテス(アカメ)属というグループには、アカメと姿かたちが良く似た「バラマンディ」や「ナイルパーチ」などの魚がいます。
バラマンディは東南アジアからオーストラリアにかけて広く分布し、アカメと同じように130cm、40kg前後にまで成長します。
アカメと同様に釣り人に人気の魚として認知されると同時に、東南アジアでは養殖が盛んに行われ、重要な食用魚としても扱われます。
アカメとバラマンディの違い

かつてアカメはバラマンディと同じ種類として扱われていましたが、1984年に別種として記載されました。
1984年とは比較的最近の出来事ですよね。昔の人たちはアカメのことをミノウオやマルカ、メヒカリなどと呼んでいたようです。
ちなみに、アカメとバラマンディの見分け方は少し難しいのですが、臀鰭(しりびれ)の棘条(きょくじょう)に注目しましょう。
画像のように2番目の棘条が一番長いのがアカメ、3番目が一番長いのがバラマンディです。さらに言うと3番目の棘条は軟条にくっついていますよ。
ラテス属最大のナイルパーチ

アカメ属の中で最大サイズを誇るのは、アフリカ大陸に生息するナイルパーチです。
ナイルパーチは漁業資源として重要な役割を果たしていますが、途上国が多いアフリカでは正確な記録はなかなか確認できません。
少なくとも僕が釣行したウガンダでは、208cm 112.9kgのナイルパーチが釣り上げられた記録が残っていましたが、もっと大きい個体がいても驚かないでしょう。
アカメの生息域と希少性について
アカメの分布域は高知県と宮崎県が有名

アカメは、高知県と宮崎県の一部の湾や河川に生息していると言われています。
アカメ釣りのポイントとなる場所は内湾や川の河口域が多く、一般的にアカメは汽水魚として扱われます。
ちなみに、潮の満ち引きに合わせてアカメが川を遡上することは良くありますが、スズキやボラのように完全な淡水域に長期間留まることはほとんど無いと考えられています。
アカメは絶滅危惧種なのか?

環境省は、アカメを絶滅危惧IB類(IA類ほどではないが、近い将来における野生絶滅の危険性が高いもの)としてレッドリストに記載しています。
絶滅危惧種と呼ばれると、希少生物だから「釣ってはいけない?」「飼ってはいけない?」と思われがちですが、絶滅危惧種に指定されただけでは法的な制限はありません。
ある意味、もう一段階上のランクとも言える、“指定希少野生動植物”に指定されることで捕獲や販売、譲渡などが原則禁止となります。
四国・九州の他県にも生息し、近畿地方にも来遊か?
一般的に高知県と宮崎県の魚と言われるアカメですが、じつは鹿児島県や徳島県などにも生息していることが知られています。
近年では、香川県や大阪府、和歌山県でも捕獲される例が続いています。
アカメは宮崎県で採捕禁止!高知県はどうなのか?
宮崎県では条例により採捕禁止です

アカメを『県の指定希少野生動植物』に唯一指定しているのが宮崎県です。
つまり、宮崎県ではアカメの採捕は禁止されています。
高知県では“注目種”!キャッチ&リリースのみOK

(高知県HPより)
高知県では、アカメを『注目種』として扱っています。生き物の保全状況には色々なカテゴリーがあって分かりづらいですよね……。
高知県が定める注目種とは、端的に説明すると“高知県内では身近に観察できる生き物だが、全国的に見ると希少であったり分布や生息状況に特徴があるもの”です。
このような生き物を注目種に指定することで、県民に生物多様性に興味を持ってもらうことについても期待されています。
現在、高知県のアカメ釣りはキャッチ&リリースに限り認められます。無暗な殺傷はもちろん、販売目的のアカメの捕獲などは禁止されています。
今後の行く末は?

近年、アカメ釣りを続けたいと考える遊漁者達のアカメや自然環境に対する意識は向上傾向にあると感じます。
様々な生き物たちが次々と指定希少野生動植物に指定されてしまう世の流れの中で、高知県においてアカメが注目種になったのは遊漁者や採集者といった、生き物好きの人々の声や行動が行政に届いた珍しい例ではないかなと個人的には感じています。
とはいえ、現時点でこそ高知県の定めるレッドリストにアカメの名前はありませんが、いつ絶滅危惧種や指定希少野生動植物に格上げされるか分かりません。
アカメ釣りにこれから挑戦したいと考える人は、よりマナーや魚との接し方を気を付ける必要があるでしょう。
アカメは海で産まれる魚?それとも川で産まれる魚?
アカメの基本的な生態は未だ謎に包まれています

稚魚から成魚のアカメが、高知県や宮崎県の汽水域にいることは分かっていますが、具体的な生活史(誕生から繁殖、死ぬまでの一連の生態)はほとんど明らかになっていません。
汽水域で暮らすアカメ達が産卵期になると種子島の沖合に産卵回遊を行うと現時点では考えられていますが、他にも産卵場所があるのではないかと仮説を唱える人もいます。
いざ、『アカメを守ろう!資源量を回復させよう!』と思っても、アカメの生態を知らないから何を改善したら良いか分からない……。
こんな状況では「とりあえず捕まえる行為を禁止しよう」。そのような場当たり的な対策しかできないのも納得できますよね。
汽水域を好む性質がアカメの特徴だが、本当は海産魚かもしれない

種子島に来遊した親魚は海に浮かぶ卵を産卵し、孵化した仔魚は数日間の浮遊生活を送りながら変態し、汽水域にたどり着いた稚魚は特定のコアマモに付くという仮説が定説となっています。
アカメが海で産卵する説が唱えられる理由のひとつに、愛媛県の水族館「おさかな館」で行われた実験でアカメの精子は淡水では動かず海水で運動することが分かっています。
また宮崎大学の岩槻氏らの研究グループは、吸水した成熟卵を持つ産卵親魚(雌)を大淀川の河口で確認し、未発表ながら一ツ瀬川と大淀川中間の沖合(2km)の表層で、精子をダラダラと流すアカメ(雄)を採集しているようです。
いずれにしても効果的かつ効率良く、アカメを守る為にも早期におけるアカメの生活史の解明を望みましょう。
アカメと今後も触れ合って行くために、釣り人ができること
世界には絶滅の危機から脱出し、スポーツフィッシングによってお金を生む巨大魚がいる

キャビア目的の乱獲にあったカナダのシロチョウザメは、一時絶滅寸前まで生息数を落としました。
しかしながら、漁獲や遊漁に対し厳格かつ明快なルールを設定したことで、チョウザメの資源回復に成功した川があります。
現在では、世界中からアングラーが集まるスポーツフィッシングの聖地となり、多くの人がこの川にシロチョウザメを通してお金を落としていきます。
▼”シロチョウザメ”の生態解明に、じつは釣り人が役立っている!
アカメはキャッチ&リリースが通用する魚

幸いにもアカメは、スズキやブリといった魚よりも少しばかり生命力が強い魚です。
実際に、僕も発信機や記録計を装着するために手術を行った経験がありますが、僕が携わった個体で放流前後で死亡したアカメはいません。
アカメは鰓(エラ)や内臓に大きな傷を与えない限り、高確率でリリースが効く魚で、チョウザメと同様にキャッチ&リリースによって持続的に利用できる魚と僕は考えています。
リリースに関する具体的なガイドブックが欲しい

アカメが釣れた場合、可能な限り魚体にダメージが残らないように心がけましょう。
幻の魚です。何日もかけて釣った魚です。もちろん、記念写真を撮ることもあるでしょう。
大きい個体の場合は無理に水からあげずに、安全な場所であればライフジャケットなどを着用し自ら入水して写真を撮るのも良いでしょう。
高知県において、“釣れたアカメをリリースする”という明確なルールができたことは素晴らしいことだと思います。
今後は、効果的なリリース方法などが提言されると良いなと個人的に感じています。
“釣り人がいるからアカメも残っている”そんな未来に向けて

『釣り人がいるからアカメが減る』ではなく、『釣り人のお陰でアカメとその生息環境の認知度が上がり、人々が環境を大切にするようになった』そのように言われる日が来れば良いなと思いながら、この記事を書かせていただきました。
僕の主観ばかりな文章で恐縮ですが、最後まで読んで頂きありがとうございました!
いつまでも、アカメ釣りができますように。
筆者紹介
山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活動中。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017