ヌマガレイの(別名カワガレイ)特徴

ヌマガレイ(Platichthys stellatus)とは、カレイ目カレイ科ヌマガレイ属に分類される異体類(いたいるい)であり、太平洋北部やベーリング海、オホーツク海などに生息しています。
冷水を好む魚で、日本の主な分布域は北海道から東北地方ですが、関東や北陸地方でも姿が見られます。
淡水域に侵入することがある

ヌマガレイはおもに北海道でカワガレイと呼ばれるように、河川の汽水域や淡水域、湖沼にも頻繁に侵入します。
繁殖は沿岸域で行われるとされ、一生を淡水域で過ごすことはありませんが、沼や川にもごく普通に生息する生態が名前の由来となっています。
カレイなのに目が左側についている

ヌマガレイ最大の特徴はカレイの仲間でありながら目が左側についていること。
ヒラメとカレイの分かりやすい見分け方として、“左ヒラメに右カレイ”という言葉がありますが、ヌマガレイには当てはまりません。

日本の沿岸部や河口域で釣れるカレイの顔した左目の魚はヌマガレイと思って良いですが、異体類は稀に目の向きが左右逆の個体も発生しますので注意しましょう。
怪魚ハンター山根
別の見分け方として、ヒラメの仲間は魚食性が強いため、口が大きく歯が鋭いという特徴があり、カレイの仲間は砂の中に棲むゴカイ類などを好んで捕食するため、おちょぼ口で細かい歯を持つといった傾向もありますよ。
英語では星空カレイとも言われる

ザラザラとした突起状のウロコが美しいのもヌマガレイの特徴で、まるで星空を連想させることから、英語でStarry flounder(直訳:星空カレイ)、また種小名にもラテン語で星空を意味するstellatusという言葉が使われています。
体長は最大で60〜80cm程度にまで成長するとされていますが、日本で釣れる一般的な大きさは30〜40cm前後、45cmを超えれば大型といえるでしょう。
ヒレに黒い帯模様があります

背ビレと臀ビレに明瞭な黒い帯模様が入るのもヌマガレイの特徴。
ヒレの模様につきましては、クロガシラガレイやマツカワ、トウガレイなどヒレに模様が入るカレイは他にもあります。
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ヌマガレイは目の向きで簡単に判別できますが、カレイは模様の似た種類が多いので見分けることが難しい魚といえます。
カレイなのに左目なのは何故?
ヌマガレイの生息域は日本近海からカリフォルニア

日本近海からロシア、カナダ、アメリカなど太平洋北部の広い範囲に生息するヌマガレイですが、じつは産地によって目の向きが異なります。
例えば、日本ではほぼ10割左目なのに対し、アラスカ周辺では右目3割、カリフォルニア周辺では右目5割と言われています。
このように、目の位置が左右逆転してしまう現状を眼位逆位(がんいぎゃくい)と呼び、ヌマガレイは本来右目の魚であるため、日本のヌマガレイについては眼位逆位の確立がほぼ100%ということになります。
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ちなみに右目のヒラメ、即ちヒラメの眼位逆位が起こる確率は0.1〜0.01%未満などと言われるほど稀な現象です。
目の向きは遺伝で決まるとされているが理由は不明

ヒラメやカレイであっても、産まれたばかりは普通の魚と同じく両側に目がありますが、ヒラメでは体長1cm程度になるまでに右側の目が頭の上を通って片方に寄っていきます。
どちらの目が移動するかは、種類ごとに遺伝子によって決まるとされ、何故ヒラメが左に、カレイが右に寄るようになったのかは明らかになっていません。
ヌマガレイだけではない

“左ヒラメに右カレイ”という常識が通用しない魚は、ヌマガレイ以外にもいくつかあります。
例えば、最も原始的なカレイ目の魚とされるボウズガレイの目の向きは5割ずつの確立で決まり、すがた形はヒラメの印象を受けます。
また、フレンチの食材として馴染み深いシタビラメ(舌平目)と呼ばれる魚は、カレイの仲間でありながら左目であるものが多く、名前にも“平目”とついています。
怪魚ハンター山根
ヌマガレイに話しを戻してみると、日本近海のヌマガレイが左目の理由は、左目になる遺伝子を持つ個体ばかりであり、何故左目の遺伝子を持つのかは謎である。という訳です。
ヌマガレイの繁殖期と釣れる時期
産卵期は冬から春

ヌマガレイの繁殖期は水温が低下する時期とされ、北海道では2月から3月に産卵します。
オスは2年で25cm程度まで成長し、メスは3年で30cm程度まで成長してそれぞれ成熟します。
繁殖行動は川ではなく、比較的浅い海の沿岸部で行われるとされています。
釣期は初夏が最盛期とされる

北海道や東北地方では、他のカレイ類に対して外道扱いされやすいヌマガレイですが、岸から狙って釣れるカレイとしては大型であり、時季と釣り場がマッチすると数釣りも楽しめます。
一年を通して釣ることができますが、水温が上昇し始める5月から6月にとくによく釣れる傾向にあります。
また、カレイの仲間としては珍しく、ヌマガレイはルアーに好反応を示すため、ソフトベイトやバイブレーションなどで釣ることも可能。
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東北地方では真冬に河川内で狙って釣れるため、釣り物が少なくなりがちな真冬でも、釣果が出る魚として、密かにヌマガレイ釣りを楽しんでいるアングラーが居たりします。
ヌマガレイの釣り方
投げ釣り

ヌマガレイは河口域や海と繋がる湖沼以外に、漁港やサーフでも釣ることができる身近な魚です。
仕掛けが着底する底質が砂泥であれば、飛距離を出す必要はなく、20m程度の近距離でも釣ることのできるお手軽なカレイです。
遠投ができる場合は、周囲より少し水深が深くなっている地形変化や澪筋(みおすじ)を探してみると釣果アップに繋がります。
仕掛けと餌

オモリや天秤の重さを竿と糸の強度に見合ったものを使用することを前提として、投げ釣り専用タックルだけでなく、シーバスタックルや強めのバスタックルの流用も可能。
仕掛けは、天秤、胴突き双方とも一般的なカレイ用投げ釣り仕掛けをそのまま使用することができます。
餌はアオイソメが定番ですが、サンマの切り身などに食いつくことも。
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潮位変動によって流れが発生するような釣り場では、重たいオモリを使用する必要があります。
一方で、穏やかな港内では、ちょい投げスタイルで釣ることができます。釣り場の環境にあった道具を選ぶようにしましょう。
ルアーで狙うことも可能

ヌマガレイはルアーへの反応も良い魚で、とくにジグヘッドリグとソフトベイトの組み合わせが効果的です。
口の形状上、スリムで吸い込みやすいシルエットのワームが適しており、サイズは3in前後が良いでしょう。
ハードルアーで狙う場合は、50〜70mm前後のバイブレーションを使った、優し目なボトムバンプアクションが効果的です。
タックルはバスタックルやエギングタックルの流用で充分楽しめます。
ヌマガレイの食味について
淡白で旨味は少ないが不味くはない

ヌマガレイは“不味い(臭い)カレイ”というレッテルが張られる傾向にあり、持ち帰らない釣り人も少なくありません。
一方で、鮮度の良いヌマガレイの刺身は、コリコリとした強い食感が楽しめるため、好んで持ち帰る釣り人もいます。
臭いの原因は鮮度と皮にあるとされ、活締めにして鮮度良く持ち帰り、ヌメリが身に移らないように注意しながら皮を引いて調理することで対処できます。
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ヌマガレイは釣れる川や湖沼の水質によって泥臭い場合もあるようです。
フライや唐揚げがオススメ

ヌマガレイは、他のカレイと比べると脂と旨味を欠く魚ですので、フライや唐揚げといった揚げ物との相性が良い魚です。
肉厚で淡白な身質なため、フィッシュ&チップスなどに打ってつけです。
カレイの定番料理である煮付けにする場合は、お湯で霜降りをしてから調理することで臭みを抑えることができます。
カレイ類の異端児ともいえるヌマガレイ

カレイといえば、キャッチ&イートの観点が強く、どうしても外道扱いされる魚ですが、見た目が綺麗でカッコ良く、ルアーにも反応がある魚ですので、是非ゲームフィッシュとして狙ってみてはいかがでしょうか。